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2004年12月17日

「ボクが取材したスゴイ奴」 - 連載(4)-

吉田豪
大物シリーズ4 正しい男編の巻

 正しい男とは何か? ボクは大物と呼ぶに相応しい男たちを何人も取材しているうちに、それがだんだんわかってきた。つまり、インタビューの原稿チェックでつまらない直しを入れない男こそが本物なんじゃないか、と。
 いや、何も「原稿チェックをさせろと言い張るUインターは横暴だ!」なんて昔の『週刊プロレス』みたいなことを言うつもりは、もちろんない。なぜか原稿チェックをさせないことをアイデンティティにしている音楽雑誌も存在するようだが、自分たちより音楽知識のないライターに取材されることも多いから事実関係の間違いをチェックする必要は絶対にあるし、ボクがインタビューされたときもできればチェックぐらいはさせてほしい。
 しかし、どうせチェックをするなら、原稿が面白くなるような直しを入れるか、もしくはあらかじめ一切直さないか、男ならそのどちらかでありたいとボクは思うのであった。

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 たとえば最近、ボクが出したインタビュー集『人間コク宝』(コアマガジン)を読めばわかるように、そこに登場する男たち(坂上忍、岸部四郎、チャック・ウィルソン、 安倍譲二、カルーセル麻紀、三浦和義、田代まさし、真木蔵人、ジョニー大倉、高嶋政宏、稲川淳二、ジョー山中、山本晋也、梨元勝、ROLLY、桑名正博、中山一也、内田裕也という18人)は、みんな本物! 別にここまで言わなくてもいいようなことばかり口にしているのに、誰もが一切直しを入れないわけなのだ!
 たとえば、坂上忍である。

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 彼が17歳のときに出した『地球に落ちてしまった忍』(84年/小学館)という本を読んだときから、彼には何かあるはずだとボクはずっと思っていた。 このタイトルは映画『ションベン・ライダー』出演時、いまは亡き相米慎二監督に「おまえは宇宙人だ。なにを考えているのかわからない!」と言われたことで、「宇宙人でもいいさ。おとなになるにつれ、いやらしく異常になっていく地球人よりはましかもしれない」と憤慨しながら命名したようなんだが、だからこそ帯には「ハンパな大人は許せない」「ずるいやつ調子のいいやつ大きらい」といった喧嘩腰なフレーズが並んでいたし、タイトル&裏ジャケではデヴィッド・ボウイ主演の『地球に落ちた男』を完コピ!
 そして「アイドルなんて、坂上流に言えば芸能界の小学生だ!」「芸能人の着てるのをまねしてるやつはうんこだ!」なんて調子でどんな対象にでも無闇に噛み付き続け、最後は「ぼくの反抗期、今だに現在進行形」「10年後、20年後、ぼくが今の心を忘れなかったら、ほめてほしい」と宣言していたわけなのだ。

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 それから12年後、彼は『ひとりごと』(96年/文藝書房)という本をひっそりとリリース。なぜか前作の存在も無視して帯に「処女エッセイ集」と明記されているのはどうかと思うが、これがまた「酒、ギャンブル、女、喧嘩。私は決して良い子ではないのです」という帯文通りの物騒な一冊だったのである。 
 たとえば、ある年の大晦日には「家族団らんで年を迎えていた最中の彼女を強引に呼び出し」て、そのまま競艇場へと強制連行! 
「彼女に『あなたには呆れたわ』と、にべもなく言われた。彼女とは、それきりだった。男と女の関係は難しい。男と女の関係は難しい。とにもかくにも面倒臭い。正月早々の競艇ツアーを、何故『粋』と感じられないのか?」 
 そして、年の始めから競艇でボロ負けしたときには「散々な目にあったから、親孝行でもすればツキが戻ってくるのではないか?」と「柄にもないこと」を考えて実家へと向かうんだが、そこで事件が起きてしまうのだ。
 不審に思った母親に「気持ち悪いわね」「借金は駄目よ」と先手を売って言われると、彼は「なんだ、この糞ババァ!」と大激怒!

「母が私の頬を平手打ちすれば、私は母の首根っこを掴み放り投げ、負けずに母はタックルしてき、私が頭を押さえつけて放り投げる。こうなったらもうなるようにしかならないのが私と母の喧嘩である。どちらかが疲れない限り終わりのゴングはならない」
 28歳にして母親とここまで喧嘩する芸能人なんて、坂上忍ぐらいしか存在しないよ!
 さらには「いつも年の瀬になると、1年間一生懸命働いて稼いだお金を、来年の運だめしと言って貯金通帳から全額引き落として使い切ってしまう」「坂上忍、平成7年度も貯蓄額『0』。この男、すべてにおいて反省の色なし!」という男らしい姿勢もアピール開始!

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 これじゃ、よっぽどギャンブル好きな女子じゃないと上手くいかないと思えば、『坂上忍の麻雀塀方勝率八割の極意』(98年/ポケットブック社)にはこう書いてあったのである。
「女が(麻雀を)打つのはどうか。これもハッキリいって、大嫌いである。理由はない。嫌いなのである」
「自慢じゃないが、オレは彼女とのデートをスッポカスことはあっても、麻雀に遅れたことはまずない」
「雀士たるもの、雀士同士の約束が女より優先するのである」
 ところが、この姿勢のまま01年1月にスチュワーデスと電撃結婚! そんなとき彼に取材することができたので、年の瀬の全額ギャンブル使い切りシステムを結婚しても続けられるのかどうか、せっかくだから聞いてみた。
「続けますね。 止めるのは無理です。 これはもう認めるというか、呆れるというか、仕方がないという感じなんでしょうけど」
 そこまで言い切る彼のギャンブル癖に呆れたせいなのか、03年に離婚が確定。そうなると、インタビューを再録できたとしても、ここは絶対削られるんだろうなあ……と不安になったら、事務所から「一切問題なしです!」との返事が届いたのであった。さすがだ!

投稿者 davinci_orange : 14:37