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2004年10月08日

「ボクが取材したスゴイ奴」 - 連載(2)-

吉田豪
大物シリーズ2 本物の大物の巻

 橋田ファミリーに巨泉ファミリーと芸能界には様々なファミリーが存在するが、なかでも最強なのはもちろん裕也ファミリーである。
 その物騒さは、83年に「なぜ外人ロック歌手ばかり呼ぶのだ!」という抗議のため刃渡り18センチ文化包丁片手にウドー音楽事務所へと乗り込み、自ら110番通報した伝説の事件からも容易に想像でると思うが、裕也さんの武勇伝はそんなものだけではない。
 西城秀樹を売り出した上条英男氏(北公次の暴露本に便乗して、90年にデータハウスからリリースした『くたばれ芸能界』と『芸能界の嘘』で有名)によると、彼がタイガースの森本太郎&岸部修三(一徳)&加橋かつみと徹夜で麻雀していたとき、「最高にヒガミっぽい男」だという「ユーヤがね、どっから聞きつけてきたんだかは知らないけど、『オレをないがしろにするな!』ってんで、上半身裸で、クサリのチェーンを手にまいて、土足で入り込んできた」こともあったらしいのだ!
 さすがは裕也さん。新婚当時、樹木希林から、あの伝説の殺人鬼チャールズ・マンソン呼ばわりされていたのは伊達じゃないよ!
「マンソンって人は、みてるだけで面白おかしな人なのよ。あドアがちょっとひっかかって閉まらないといっては“なんでドアまで、さからうんだ。女房がおれにタテつくからか”なんて、大声で怒鳴ってる」(樹木希林・談)
 さて、そんな裕也さんをどうにか取材したいと考えたボクは、まず『BREAK MAX』(コアマガジン)という雑誌でマンソン・ファミリー、もとい裕也ファミリー制覇を目指して力也〜ジョー山中〜桑名正博(敬称略)と芋ヅル式に取材を続けた。その結果、ようやく裕也さん取材へと辿り着いたのである!
 かつて大物インタビュー集『男気万字固め』(01年/エンターブレイン)のボーナストラックというか、ムツゴロウさんのインタビューが諸事情で収録できなくなった(ネットで検索したら掲載誌をそのままスキャンしたものが読めるはず)巨大なマイナスを埋めるべく裕也さんにオファーしたものの、取材直前になって高熱が下がらなくて取材を断念した過去もあるので、今度こそリベンジしてやる!
 そう覚悟して裕也さん取材に挑んだわけだが、やっぱり緊張感は尋常じゃなかった。
下手に踏み込むと「……その話はいいだろ!」と注意されるし、子供の頃から順番に話を聞くと「……昔の話をあんまり追っても意味が無いから、いまの話を聞いてくれ!」と容赦なく駄目出し。そんな状態から話が上手く転がせたのは、裕也さんの名著『俺はロッキンローラー』(76年/講談社)のおかげだった。
 裕也さんは、「僕は金にうといね。だからしょっちゅう電気が止まったりするんだよ」「メシ食ってると東京ガスがたまったガス代集金に来る。これはロックンロールだよ」というライフスタイルゆえ、過去の著書や資料を倉庫に保管しておいたもののお金を払わなかったせいで全部破棄されてしまったとのこと。
 だからこそ、自分も持っていない本を見てすっかりゴキゲンになったというわけなのだ。
 こうして、最初こそ「酒を飲んだらおかしくなっちゃうから」とシラフで話していた裕也さんは、「お前らも飲むか?」と言いながらワインを次々と注文。光栄だとはいえ、「飲んでて小便しようと思って便所に行ったら、便所に網を張った5ミリぐらいのガラスがあった。そのガラスがオレを見て笑ったような気がした」だけでガラスを殴り12針縫った伝説を思うと、これはとんでもない緊張感だよ!
 その結果、インタビューは3時間を突破!
 後半は著書に書かれた「善 善と悪は、いつも裏表である」「悪 悪といえば阿久悠」「罪 罪は俺自身」「罰 罰はドストエフスキー」などの「内田裕也の金言名句集」を裕也さん自ら読み上げ、「俺、いいこと言ってるなあ!」と振り返ってばかりいたとはいえ、喜んでいただけたようで何よりなのであった。
 なお、スーツでキメた裕也さんが屋外なのに裸足でポーズを取っているのが謎だらけだと何人かに質問されたんだが、ボクが見た限りでは座ったポーズで写真を撮る際、ふと見た自分の靴下に気合いが感じられないと感じた裕也さんが「さっきまで話の流れだと、靴下はない方がいいな!」とアドリブを利かせて裸足になったんじゃないかと思うのである。
acb.jpg
「俺の昔のことを書きたいんだったら、『新宿ACB』(03年/講談社)って本を読んで
くれ! あれに詳しく書いてあるから」(内田裕也・談)ということで、その本に掲
載されている若き日の裕也さんがこれ。

flower.jpg
「見てくれよ、この写真! いま見ても、そこらの外タレになんか全然負けてないだ
ろ?」と裕也さんが言うのも納得できる、ジョー山中率いるフラワー・トラベリン・
バンドとの一枚。

pajama.jpg
当時はステージだろうとハワイの国際映画祭だろうと、常にこのギンガムチェックの
パジャマ姿だったという裕也さん。さすがにハワイではLSDをやってると思われたそ
うだが、いまでは「ちょっとヤバそうな、ぶっ飛んだ顔してるよ(笑)。やっぱり、
おかしかったんだろうな……」と冷静にコメントしてました。

sign2.jpg
取材後にいただいたサインがこれ。なお、プレゼント用の色紙にサインするときは
「ROCK'N ROLL」と書こうとして「やべえ、間違えた!」と言われてました。

投稿者 davinci_red : 2004年10月08日 00:00