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2004年09月03日

「ボクが取材したスゴイ奴」 - 連載(1)-

吉田豪
大物シリーズ1 将来の大物の巻

 ボクが大槻ケンヂさんに会うと、必ずといっていいほどこんなことを言われるものだ。
「俺は『豪ちゃんの文体に影響を受けた』って公言してるのに、豪ちゃんはなんで俺のことを原稿に書いてくれないのよ! 豪ちゃんの好きな男気溢れる昭和の芸能人やロッカーみたいに、女の子とヤッた話もマジックマッシュルームでラリった話も、ポルシェに乗ってるいることだってネタにしてるのにさあ……」
 確かに、大槻さんがいまとなっては日本でも数少ないセックス&ドラッグ&ロックンロールな活動を続けているミュージシャンなのは、紛れもない事実。しかし、ボクも含めた文科系の人間がどれでも無理をしたところで、本物には到底勝てるわけがないのである。
 本物とは、つまり昔から「俺は大物なんだ。明日の大物なんだ。とにかく大物なんだ」と何度も言い続けた結果、三池崇史監督の『IZO』で20年ぶりに主役を張るまでになった中山一也みたいな男のことだ。

三池崇史監督作品『IZO』
izo03.jpg
現在、渋谷シアター・イメージフォーラムにてロードショー
http://www.izo-movie.com/

 北野武や松方弘樹、桃井かおりに緒方拳といった大物ばかりが出演する中で、なぜ誰よりも無名な彼が主役に選ばれたのか? それは、彼が20年前に主演するはずだった映画を降板させられるなり監督でもあった大物芥川賞作家をナイフで刺し、復帰後は倉本聰の自宅で割腹自殺を図り、さらには「俺が報われないのは日本の映画界が悪い!」とばかりに築地の松竹に車で突っ込んだ過去を持つ、正真正銘の本物だからなのである。
 作中で200人以上殺しまくる怨念と狂気に満ちた“人斬り以蔵”役を素で演じられるのは、彼ぐらいしか存在しないことだろう。なにしろ、以蔵役にも「金正日を殺してやる!」って思いを込めて演じてたっていうぐらいだし。
 そんな本物の男を先日、遂にボクは取材することになったわけである!
 下手したら刺される! ……というぐらいの緊張感に包まれながら恐る恐るボクが名刺を出すと、いきなり彼は鋭い眼光でこちらを睨み付けながらこう切り出した。「吉田氏には、ずっと会いたかったんだよ!」
syuyaku.jpg ……えっ!? もしかして、彼の著書『刺されたいのか、主役はこの俺だ!』(84年/長岡書店)をある媒体でボクが書評したのを読んで、怒ってるとか!? ヤバい、ボクも刺される!
「いや、去年の2月ぐらいに仕事がなくて落ち込んで、また世間を賑わして塀の中に行こうと思うぐらいテンパッてたとき、吉田氏の書評で励まされたんですよ! あのときはちょうどハンミちゃん一家の日本領事亡命事件にブチ切れて、中国大使館に乗り込むつもりだったから。その感謝の気持ちを伝えたくて、俺は吉田さんの自宅と思われる電話番号を入手して100回ぐらい電話してるんだけどさ」
 そう熱く語りながら彼が差し出した携帯には、「よしだごう」という名前と、見たこともない電話番号が登録されていたのである……。
「今日の出会いは、梶原一騎さんと大山倍達さんの出会いに等しいんじゃないかな。自分のことを世間に伝えてくれる人にようやく会えたっていうね。だから俺は、これから死ぬまで吉田氏と長い付き合いを……嫌でしょうけど」
 当然ボクは「刺されなければ大丈夫です!」と答えたので、これから面白いことになりそうなのであった。やっぱり本物は凄いわ!

sign.jpg
なお、彼はいままでサインをしたこともなければ、この本を持ってすらいないので、これが日本で唯一のサイン本なのだそうです。

投稿者 davinci : 01:51