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2004年11月06日
「江國香織をもっと知りたい」取材後記
「ちょっとこれ、どうやったらこんなに汚れるんですか?」
特集の打ち合わせに持参した『ホリー・ガーデン』を恐る恐る手に取りつつ、訝しげな表情を浮かべる編集さん。それもそのはず。なにせ私の『ホリー・ガーデン』は、日光浴でもさせたのかというくらいこんがりと焼け、ページをめくると薄茶色の星々が広がる。転々としてきた街それぞれの日差し、紅茶やコーヒーや、ときには大好きなナポリタンのケチャップ。その愛ゆえ手荒く扱われてしまった、可哀想なウチの『ホリー・ガーデン』。まさか、その産みの親である江國さんにお会いすることができるなんて、考えもしなかったのだ。これでは大型古書店のエプロン姿の店員だって顔色が曇るだろう(売りになど出さないけど)。そもそも、どうして私の口元は、食べ物をすぐこぼすほどゆるいのか。口の筋肉を鍛えること1週間、私はついに取材の日を迎えた。
しかし、その部屋に江國さんがいらっしゃるなり、緊張とは裏腹にも全身はゆるゆるに。ラフなジーンズと黄緑色のノースリーブセーター、その上からジャケットを羽織った江國さんは想像していたよりもちっちゃく、挨拶のため頭を下げたとき、私はたしかに「ぺこり」という音を聞いたと思う。また、事前に編集さんから「声がまたかわいらしいんですよ」と噂を耳にしていたが、実際のそれは甘くて、でも、どこかぴりっとする……チョコレートに粒胡椒が混ざったみたいな、あるのかそんなもの?でもあったら間違いなく美味しいだろう、そんな声だった。
今回の特集タイトルは『江國香織をもっと知りたい』。光栄にも“知りたい”に迫る一員として参加させていただいたが、迫れば迫るほど知りたい欲が膨らむ、ほとんど恋のような存在感。それが江國さんと、その作品の正体だと思う。
江國さんにお会いしてわかったことは、私の口は本質的にゆるいわけじゃない、ということ。いつもゆるゆるさせられてしまっていたのだ。そのうち、今はしゃきっとした手触りの『間宮兄弟』にも、コーラやらウスターソースやらの攻撃が始まるだろう。でも、それも仕方あるまい。だって、もっと知りたいんだから。
投稿者 davinci_orange : 2004年11月06日 04:32