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2004年09月24日

トラック野郎 男一匹筋太郎!  - 連載(2)-

ダヴィンチ・もう一つのオリンピック

 ♪嗚呼ァ〜嗚呼ァ〜一番星消えるたび〜俺の心が寒く〜なる〜♪

「こちらトラック野郎、筋太郎!ワッパ稼業の旅から旅への渡り鳥〜

 ジョナサ〜ン!今回は今年の熱い夏に出会った俺の新しい仲間達を紹介するぜ!」

しかし、お盆っていうのはワッパ稼業も暇でいけねぇ。なんか世間じゃオリンピックのメダルラッシュで盛り上がっててよ。「俺もメダルラッシュだ!」と行きつけの新中野のパチスロ屋に行ったけど、お盆で渋りやがってまったくのメダルラッシュにならずオケラになっちまったから、仕方なく自宅に篭って昼からオリンピック中継を見る事にしたんだよ。

 そしたら「ガガガガガガガガァ〜ッ」物凄い爆音が響いてさ、俺はてっきり「オリンピックでテロが発生か!」と思ってワクワクしてテレビの音量最大にしたんだけど、テレビの音声よりもデカイ「ガガガガガガァ〜ッ」と爆音がなり響いている。なんてことはない俺の向かいの家の取り壊し作業が始まったんだ。

まぁ、これがウルセェのなんの!オリンピックどころの騒ぎじゃないんだよ!アッタマ来たから一発ドヤしてやろうと窓から見てみると驚いたよ。

 今年は連日40度近い猛暑でさ、その中で汗みどろになって男5人が一軒家を解体してるんだよ!

 ちなみに解体されている向かいの家はこの近所で20年以上電気屋を営んでいた家族の家だったんだけど、何かの理由である日突然、家だけ残して一家が消えてしまったのである。近所のスーパーでのババァたちの井戸端会議に聞き耳立てると「夜逃げなんて本当にあるのねぇ」って盛り上がっていたので、家財道具からなにから全て残して夜逃げしたってことは分かった。

 さらに聞き耳を立てると「どうやら、あの一家は K 温泉で家族住み込みで働いてるらしいわよ」なんて「テレビのちから」ビックリな消息情報まで知っていたので俺もビックリ!でも、あんな近所から親しまれて幸せそうな電気屋一家が夜逃げするなんて信じられなかった。その家族が思い出も沢山詰まった家を全て捨て、ひなびた温泉地で住み込みで働いてる姿。そしてその家は俺の目の前で取り壊されている。

 ちょっと感傷的になってしまった俺だったが、夜逃げ一家の家を破壊する解体業の男達の取り壊し作業のあまりのダイナミック&エネルギッシュぶりを見ているうちに、だんだんと違う感情が生まれてきた。

 解体メンバーは外国人の5人組。今年は連日40度近い猛暑を記録して、この日も朝からパチンコ屋の駐車場で車内に置き忘れたペットボトルのウーロン茶はグツグツと煮えたぎり、老人&子供は熱中症で即死してしまいそうな真夏日!

 そんなラドクリフでさえ体調崩して棄権しちゃいそうな現場でゲロ一つ吐かずに近所の迷惑顧みず「ガガガガガガガァ〜ッ」と破壊を繰り返す外国人!

(写真1)突入せよ!
(写真2)屋根の上の外国人達

(写真3)一軒家レイプ

(写真4)シャイなリーダーユンボ
(写真5)真のトップアスリート達
(写真6)トラック野郎!
(写真7)3日で更地に近所ではなぜか「グランドゼロ」と呼ばれている
 夜逃げした一家の事の俺のセンチな思いなど関係ない彼らは、なんの遠慮も躊躇もなく玄関を重機のユンボで破壊し突入!(写真1)屋根に上り一気にバールで屋根を剥がす!(写真2)壁をハンマーでブチ破る!夜逃げ一家が家族団欒で食事したであろう居間にズケズケと地下足袋で上がり込む!テレビを倒しブラウン管が爆破!台所の食器棚も YAWARA ちゃんの一本勝ちよりも気持ちよく投げ倒す!トイレの白い便器はバラバラで割れた白い板チョコの様に踏みつける!息子の部屋に飾ってあった3代前のビールのキャンペーンガールの水着のポスターを軍手でビリビリに破る!最後は家を支える柱もバキバキとへし折り、夜逃げ一家の家が彼らによって裸にされていく(写真3)(これは綺麗にムーディーに脱がされているのではない、野獣が群がるように剥ぎ取っていくよう)。

 テレビ見ればオリンピックでがんばっている外国人が写っているが、その鍛え抜かれたアスリート達よりも、俺の目の前でユンボとバールだけで家一軒を解体する男達の方が次第に輝いて見えてきたのだ!

 彼らの白いシャツは汗と埃でコーヒー牛乳みたいに変色しズボンはズタボロ!機能性に優れたオリンピック選手のユニフォームも凄いがこの人たちのユニフォームも解体現場の機能性に優れているのも分かった。

 俺はオリンピックよりもこの3日間の彼らの仕事に釘付けになった!雨が降って作業が中止にならないようにベランダにてるてる坊主もくくりつけたぐらいだ。

 3日じっくりと観察していてユンボを操る男はリーダー格(以下ユンボ写真4)。他の4人はそのリーダーの作戦通りに動く。これだけのシンクロの井村鬼監督よりも厳しい指導の基に築きあげられたチームワークであろう。

 俺に感動の3日間を与えてくれた彼らにどうにかしてお礼したくなった俺は、最後の日に彼らの元に差し入れを持って彼らにコンタクトを試みた。

 ユンボは訝しげに「アンタ入国ノヒトカ?」と警戒していたが、次第に打ち解けてくれて「どこから来たの?」と聞くとユンボは「ワタシタチ、クルド人」と答えた。これには驚いた。クルド人といえばトルコ、イラン、イラク、シリアなどに分断されてしまって、独自の国家を持たない大変な人たちだ。

そんな大変なクルド人が、夜逃げして帰るところのなくなったまぁ国内難民となってしまった家を解体する。う〜んこの筋書きのないドラマはオリンピックの感動よりも俺を熱くした。

 彼らは別れ際 俺が「今オリンピックが盛り上がってるけど、あなた達の見事な仕事の方がオリンピックよりも感動しました。大したもの差し入れできないけど、これ俺からの金メダルです」と言ってビールを渡すと「コンナフウニチカヅイテクルノハ、入管ノ人カトオモッタケド、ソウジャナケレバ、アナタシンセツナ人」と言ってビールを受け取ってくれた。何が彼らが素晴らしいかといえば、その場で差し入れのビールに手をつけようとしないのだ。俺が「仕事も終わったんだから飲んだらいいじゃん」と言うと「コレカラマダコレ運転シテカエルカラダメネ」と言ってお茶と水をゴクゴクと呑み出した!トラック野郎にとって大問題となっているドーピングも見事クリアーしてるのだ(写真5)!

ドーピングまでしてメダルを獲ろうとしたどこかの国の選手に、この人たちの爪の垢と汚れた軍手を煎じて飲ませてやりたくなった。

ユンボは帰り際なぜか俺を見て「アリガトウ、アナタモ無職ナラ、明日カライッショニ仕事シマショウ」と俺を誘ってくれた。俺とユンボは仲間になった!

そして彼らは夜逃げ一家の家の廃材一杯にを積んだトラック ( 写真6) で埼玉へビュビュビュ〜ン(トラックの去っていく音)と帰っていった。

 この更地にこれからどんな人が住み、どんな家が建つのかは分からない。しかし、俺はたかが3日間だったが熱いクルド人達の戦いを忘れない。もちろん夜逃げ一家の事も忘れてはいけないのだけど(写真7)。

 「よ〜し!ジョナサ〜ン!早速、このオリンピックを越えた感動のエピソードを持って、 K 温泉で住み込みで働いている夜逃げ一家に報告しにいくとするか!って、『余計なお世話だ!』って言われるのがオチだから止めておこう!う〜ん、なんだかセンチな気分だぜぇ」ビュビュビュ〜ン(トラックの去っていく音)

文・玉袋筋太郎

投稿者 davinci : 2004年09月24日 10:05