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2004年08月13日

水道橋博士の「本、邪魔か?」(1)大槻ケンヂ

otsuki.jpg 「あのさぁ、オレさぁ〜、もうテレビ出るの辞めることにしたよ〜」
と俺に、テレビ局の楽屋で、断筆宣言ならぬ、断テレビ宣言したのは、まだ、チリチリのツバメの巣が腐ったような髪の毛を断髪する前、の大槻ケンヂだった。
 さらに、「星雲賞も2回連続、貰ったことだしさ〜、おれさぁ〜本格的に書いてみるよ〜」と、と大それたことを断言したのだった。
 その大きな志に、森田公一ならずとも、♪せいうん〜それは〜きみが〜みたひかり〜と歌いだしたいところだが、「星雲賞」とは、もちろん、お線香ではなく、1970年から続く権威あるSFの文学賞である。
 この賞は、日本SF大会参加者の投票により、その一年の優秀SF作品及びSF活動に対し、与えられるものであるが、その短編部門で、1994年『くるぐる使い』そして、95年『のの子の復讐ジグジグ』と、オーケンが連続受賞したのである。この快挙は、もはや覚えているものも数少ない、中森明菜のレコード大賞2年連続受賞に匹敵するほど、知る人も知らない偉業となっているのである。
 なにしろ、自称・作家は、星屑ほどいるが、星雲賞にまで手が届くのは、ほんの一握りであろう。ましてや、星は星でも、輝かしいテレビ・スター業、ロック・スター業などを投げ打ち、ペン一本で生計を立てようとするのだ。
 オーケンの文才に一目も二目も置く俺は、一も二もなく賛成した。
 なにしろ、俺は未だに「週刊文春」の「私の読書」に書かれた、フランス文学者・鹿島茂先生が書かれた「大槻ケンヂ評」を切り抜いて、大事に持っているほどの、オーケンマニアである。


大槻ケンヂを読め!

01.jpg 今回、こうして遭遇したのが大槻ケンヂ『のほほん雑記帳』。単行本だと大槻ケンヂはロックバンド『筋肉少女帯』のヴォーカルだからタレント本のコーナーに置かれている。それが文庫本であるために他の文芸書と並べて平積みされていたのだ。
 イヤー、ぶったまげたね、大声で断言する、大槻ケンヂはいま日本で一番いい物書きだぞ!私がノーベル賞委員なら、同じオーケンでも、大江健三郎にではなく、断然、大槻ケンヂにあげる。こんなことを書くと、なにを今さらと玄人筋からの嘲笑が聞こえてきそうだが、それでも団塊世代以上が多い本誌の読者のために私はあえていう、大槻ケンヂは泣かせる、騙されたと思って読んでみろっと。
 では、どこがいいかというと全部いいから引用のしようもないが、中でも、初恋の思いでを綴ったエッセイ群は青春とはとうの昔におさらばしたオヤジでも胸キュンとならざるを得ない名品だ。

週刊文春 97.7.24 私の読書日記 鹿島茂

 何が凄いって、斯界の専門家から、星雲賞どころか、ノーベル文学賞作家に相応しいと言われているのだ。
 しかし、この「テレビに出ない」宣言、当時、オーケンは、お得意の超常現象だの、UFO研究だのが高じて、精神不安定、パニック障害を発病し、常日頃から安定剤などのクスリを飲みながらテレビ出演していたのである。まさに、虚空の光を見つめ、♪きみが〜みたひかり〜状態だったのだ。
02.jpg のほほんと、生きて行くのが一番の特効薬に違いなかった。
 しかも、楽屋で突如言い出した、この大胆発言に、番組司会の田代まさしさんは、「おい、あいつー、大丈夫か?クスリでもやってんじゃねぇの?」と、ホントに、クスリをやっていたのは、マーシーのほうだった。
 そして、その年の10月、免許の証明写真を、いくつも変装して撮影した上、『笑っていいとも』などで披露したところ、「変装免許証事件」で、警察にガサ入れをくらい、オーケンより先に、書類ソーケンで、ホントに、テレビに出られなくなったのは、俺の方だった。

 それから、1年半後、俺はテレビに無事復帰し、大槻ケンヂとテレビ番組の収録が同じになった。
いつの間にか、彼の髪は抜け落ち、UFО着陸痕と化し、頭部にはミステリーサークルが広がっていた。
 「なんだよ!オーケン、相変わらず、テレビに出てるじゃん!」
と俺はなじった。
 「博士〜。あの言葉はねぇ撤回するよぉ〜。だってさぁ、今の時代、誰も本なんて読んでいないんだもん〜。オレがテレビに出てないと、誰も、オレのことなんか本を書いていることすら知らないんだよぉ〜、あのさぁ〜やっと、わかったんだけど、本なんて、生きていく上で、もう邪魔なもんなんだよ!」
 とおっしゃったのである。
 さて、既に50作を越える作品群もある、我らがダメ人間世代の次期ノーベル文学賞候補作家であられる、オーケン先生の……俺が選ぶ、ベスト・オブ・ベストは「のほほん雑記帳」(角川文庫)である。
 鹿島先生も褒めちぎってた、この作品は、大槻ケンヂの処女作であり、その文庫本の解説を俺が書いているのだ。

投稿者 davinci : 00:56