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2004年12月06日
古典と前衛、男と女などの境界を超え、凛とした佇まいで私たちを魅了する篠井さん。一体、篠井さんのステキの素って何だろう? そこで、篠井さんのステキの素を探るべく、篠井さんとそのお友達・夢香さんとの往復書簡をこっそり見せてもらうことに……。
毎月、二人から一通ずつ、お手紙が届くのでお楽しみに!
今回のテーマは「一期一会」です。

英介さま
おかえりなさい! 旅公演おつかれさまでした。
電車で函館から札幌までの旅かあ。いいですね。ずっと寝食を共にしていると、自然とチームワークもよくなりそうですね。
さて、先日の英介さんのアドバイスに背中を押されて、思いきって片想いの彼に告白をし(!)、結果は、玉砕でした……。でも、スッキリしました。
「短い人生、好意を持った人には、好意を伝えなくちゃソン!」ですもんね。
きちんと気持ちを伝えることができてよかったです。今は、さあ次へ! という気分です。
英介さんは特に、演劇という一期一会の芸術を通して、人一倍実感しているのだろうと思いますが、私は最近になって「一期一会」という言葉に対する想いが変わってきたように思います。
何と言うのでしょうか。以前より、真摯な気持ちで受け止めるようになってきたかも。
昔は、ずっと続くもの、変わらない関係があると、頭から信じて疑わなかったけど、恋愛でも、友情でも、親との関係だって、みんな変わっていくんですよね。
悲観的な意味じゃなくて、歳を重ねて色んな経験をすることで、自分もどんどん変わっていくわけだから、お互いに求めることや、人との付き合い方も当然変わっていく。以前は、それをとても悲しいことだと思っていたのですが、その思いも少し変わってきました。
例えば子どもの頃は、恥ずかしいのと意地っ張りなのとで、なかなかすぐに「ごめんなさい」が言えなかったり、ほめられても「ありがとう」と言う言葉がすぐ出てこなかったりしたのですが、今は、そういう気持ちを伝えることに、躊躇をしないようにしています。
特に、いいことは積極的に伝えるようにしています。私も自分の作品をほめられると、やっぱりうれしいし。相手は私の性格をよくわかっているから、言わなくても汲んでくれるだろう、と思ってはいけないな、と。
う〜ん、まあ、当たり前のことといえば当たり前のことなのですが。
もしかして「一期一会」の話からズレてますか?
こんなことを思うのも、自分の両親をみていて、歳をとったな、と思う機会が増えてきたからかもしれません。
一期一会とは、「茶会に臨む際は、その機会を一生に一度のものと心得て、主客ともに互いに誠意を尽くせ」といった茶会の心得が語源だそうですよ。深いですよね。
英介さんも旅公演中、普段とは違う出会いや面白い出来事など、「一期一会」な体験をたくさんなさったのではないですか? ぜひ、お土産話を聞かせて下さい。楽しみに待ってます。それでは。

夢香さま
いよいよ寒くなってきましたね。
台風や震災の被害を受けた方々の身にも冬はやってきます。苦しく、つらい思いをされた今年は、皆さんの人生に忘れられない何かを刻まれた年になったに違いありません。
早く暖かで安心した生活を送れるように祈るばかりですね。
夢香さんは元気ですか? 創作のほうはいかがでしょう。
お一人で創造するお仕事だから大変でしょう。楽なように思われがちですが、仲間がいないのは、逆に大変なんじゃないかと……。
演劇の場合は、たとえ「一人芝居」といえど、脚本や演出があって、美術、照明など、現場ではたくさんの仲間と共に創ります。
ですから、そんな一人きりの仕事は、私にはさぞ厳しいことのように思えます。
「自分との戦い」なんてよくスポーツでいいますが、きっと夢香さんもそうなんでしょうね。
さて、思い切って片思いの人に告白したんですって? あらら、アドバイスした身としては責任重大です。「結果は玉砕……」とのこと。ううん、難しいですね、恋愛って。
でも、「きちんと気持ちを伝えることができてよかった」と思えたのならすばらしい。
この世で思いどおりにならないのは人の身と心――とは、いつも私の思うところです。
かなりのことが、努力とか周りの人の助けで、何とかなってゆくと楽天的に思っている私ですが、人間の生命と感情だけは、どうにもままならない。そう思います。
それでも時は過ぎゆくわけですから、それを憂いてあんまり立ち止まっていてももったいない、とも感じるのです。
夢香さんも、変わりゆくことを実感して、受け入れて、楽しもうと考えているようですね。
私もこの頃、物事を“あと回し”にしないように気をつけてます。
日常の煩雑なことも、できることからやっちゃえ、と。あとに回す時間はないぞ。
やっときゃよかったって後悔したくないというか……。
ことに、人との関りにおいては、できる限りのことを、と思うようになりました。
実は、今年の二月に叔母を亡くしました。
まださほどの年令でもないのにこの世を去ってしまい、びっくりしました。まだこれから恩返しを、と思っていながら出来ずじまい。
命のはかなさを痛感しつつ、自己満足かもしれないけれど、大切な人には、今できる限りの事をしよう、又、伝えよう、とつくづく思ったのです。
自分の周りにいる人達との関りこそ、自分の生きていることの証しとすれば、お互い幸せをめざして良き間柄でいることこそ生きること、なんて云うと大げさですかね。
仕事にしたって、評価したり認めてくれたりする人あってですからね。
そんな風に思うと、今伝えておくこと、今できることを、ちゃんとやらねばと感じる今日この頃です。これも“一期一会”ですね。
大切なのは、すべてを完璧に、なんて思いすぎないこと。気ままに、自分にとって大切な人、重要なことについて、見送りせずにやってゆくということ。
つまり、自分には何が大切で、気持ちよく、元気が出て、充実するのかをセレクトする目と勘が大事ですよね。
これこそが幸せになる極意のように思えるのですが、いかがでしょう?
自分自身の本質的な望みに気づかずに、違うことに努力したり……思い違いをしていること多々ありが人生かも。
なんだか深く難しくなってきた。いつもお説教臭くなってごめんなさいね。
私は明日からまた旅公演です。東から北の小さな町を中心に、二十ヶ所も回ってお芝居してきます。雪の北海道ではおいしいものを食べなきゃ。おいしいみやげ話をお楽しみに。
※篠井さんのお友達・夢香さんは、架空の人物です。当連載に作品をご提供頂いている、シルクスクリーン作家の藤田夢香さんとは同一人物ではありません。
投稿者 davinci_silver : 00:00