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2004年10月06日

古典と前衛、男と女などの境界を超え、凛とした佇まいで私たちを魅了する篠井さん。一体、篠井さんのステキの素って何だろう? そこで、篠井さんのステキの素を探るべく、篠井さんとそのお友達・夢香さんとの往復書簡をこっそり見せてもらうことに……。
毎月、二人から一通ずつ、お手紙が届くのでお楽しみに!
今回のテーマは「素敵な歳の重ね方」について。

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英介さま

拝啓 英介さん!お手紙ありがとうございました。
英介さんが私の作品に対して「エロチック」だと思って下さってうれしいです! 
とたんに元気になりました。

それにしても、共演の女優さんが、何気なくゴミを拾っていったというエピソードは素敵。通り過ぎた後の香水の残り香のようで、「色気」というよりは「色香」という言葉の方がしっくりくる気がしますね。
でも、外見・内面ともに備わっていることを、「色も香もある」というくらいだから、色香のほうがより高度かも。う〜ん、色っぽい女への道はまだまだ果てしない!

英介さんの手紙に書かれている
“「色気」がゆとりの中に潜んでいるような気がしてきましたが。”
という一文には、なるほど、と思いました。
確かに、私が素敵だな、色っぽいなと思う人ってゆったり構えた方が多い気がします。
緊張感と抜けのバランスが取れているというか、肩の力が抜けているというか。

あと、潜んでいるっていうのも大事なところですよね。
一見、穏やかで凛とした雰囲気の英介さんが、演じている時に見せる野性味や狂気。一体、どこに隠していたのかしら、と思います。私が英介さんに対して「色気」を感じるのはそんな時でしょうか。言葉にすると、やっぱりちょっと恥ずかしいですね。(笑)
でも、そういう普段はなかなか見えない部分が見え隠れすると、ドキッとしますよね。

さて、英介さんは年齢を経た方々に色気を感じるということですが、私も年配の方で、粋でカッコイイ人に出会うとうれしくなります。
女性は特に、まだまだ若さが信奉されているところがありますし。
私の友達でも、歳をとることを異常に怖がっている子や、30代以上・独身・子ナシの負け犬にはなりたくない!て焦っている子がけっこういます。
でも、どうせ歳はとるんだし、だったら粋でカッコイイ大人になりたい!そう思います。
英介さんは、素敵に歳を重ねていくために、心がけていることってありますか? 
また、身近にお手本にしている方とかいるのですか? 
よかったら教えて下さい。

今度の「色っぽい」舞台、必ず観に行きます。くれぐれもお身体大切に!

かしこ
夢香

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夢香さま

拝啓 厳しい夏の暑さも、何度かやってきた台風と共にようやく去りましたね。
あちらこちらで被害があったようですが、夢香さんのご親類やご友人は大丈夫でしたか?
天災は本当にどうすることもできません。

そういえば、夢香さんのご出身も年令も私、知らなかったんですね。
 私も年をとるなんて、十年位までは他人事のように思っていたのに、ここ数年はめっきり老けこんで……。いえ、実際に体力や気力が以前と違うのに気がつかされるんですよ。老眼は一年程前から始まりました。もう、びっくりです。
 俳優業も色々で、二枚目の人、キャラクターのある方、若くから老け役専門なんて方もいますから一口で云えません。
男は年を重ねて深みが出るなどという評価もありますから、「そうだ、そうだ!」と自分をなぐさめつつ、なんてところがこの中年という不安定な時間を生きぬくコツなのでしょうか。

変な云い方ですが、私には第二の思春期のような……誤解しないで下さいね。心と体のバランスが、ということですよ。こんな仕事ですから気は若い。未婚の一人者としては学生時代の延長線のように役者の道を歩んでいるのですが、急に老いをつきつけられたような気分なのです。
ここ二年ばかりの落ちつかない心と体は、まだ夢香さんにはわからないでしょうね。
 男の私でさえ顔のたるみや、しわに鏡をみてぎょっとするんですから、まして女の方はとお察しします。ですから、どうしたら上手に元気に年を重ねてゆけるかは私も良い知恵がほしいところです。

「自分の夢みた道を歩めていいねぇ」などと学生時代の旧友などに云われますが、好きなことを本気で職業にしていくのには、かなり努力も必要だし、自由業なりのストレスもありますよね、夢香さん。
 夢香さんにとって作品を創ることは、やむにやまれぬことなのかしら。あふれ出てくることもあれば、産みの苦しみもあるに違いないでしょう。まして創作で生計を立てるとなると大変ですね。
 好きな事のはずが苦しみに転じる時もままあるんじゃないですか? カッコよく云えば芸術家のこれは宿命でしょうか。

 気晴らしのはずが、遊びや趣味がストレスになるなんてことも起ってしまうのが現代社会の落し穴のような気がしませんか。
私がほんとうに無趣味なのは夢香さんもご存知の通りです。
友人も演劇、つまり仕事以外に熱中できるものを持て、と云ってくれるのですが……。
楽器も、陶芸も、自動車を運転するのにも、楽しめるところまでゆくにはそれ相当の努力が必要ですよね。そこへゆくまでの根気が私にはないんです。
弁解めきますが、仕事でできないことをがんばってできるようにする日々、この上がんばりたくない、とつい感じてしまうのです。
人を好きになると熱中してしまうんですが、これこそ思うにまかせずストレスが……。
夢香さんはどうでしょうか?
自分の性分を見極めて、本当に自分の心と体が欲するものを選んでゆく。
これが上手な老い方、かな。
 夜など肌寒い日がありますのでご用心下さいね。

敬具
英介

※篠井さんのお友達・夢香さんは、架空の人物です。当連載に作品をご提供頂いている、シルクスクリーン作家の藤田夢香さんとは同一人物ではありません。

投稿者 davinci_silver : 00:00