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2004年09月06日
拝啓 篠井英介様
古典と前衛、男と女などの境界を超え、凛とした佇まいで私たちを魅了する篠井さん。一体、篠井さんのステキの素って何だろう? 篠井さんの世代を越えたお友達である夢香さんに、大好きな英介さんのステキの素を探るべく、篠井さんに宛ててお手紙を書いてもらいました。今回のテーマは「色気」について。粋でカッコイイ大人になりたい方は必見!

英介さま
拝啓 残暑の中にも秋の気配が感じられる季節となりましたね。
英介さんお久しぶりです。お元気ですか?
今年の夏は凄まじい暑さでしたね。体力には自信のある私も、すっかり夏バテしてしまいました。体が弱ると悶々と色々なことを考えちゃいますよね……。
実は最近、信頼する画廊のオーナーからドキッとするようなことを言われたのです。
「君の作品、素敵だけど……もっと色気が欲しいね」て。
私自身、彼にそう言われる前からちょっと思うところがあって、それを言い当てられたような気がしたものだから、なおさらドキッとしました。といっても、作品の「色気」についてじゃなくて、どちらかというと、私自身の「色気」について考えていたのですが……。
私も今年28歳。細々とではあるけど仕事もして、まあ何とか経済的に自立もできるようになりましたし、恋愛もいくつか経験してきました(今はしてないけど……)。
だけど、私、本当に大人の女性っていえるのかしら? 何かが足りない気が……。と思っていたところに「作品に色気がない」て言われて、ハッとしたんです。作品は、私自身を映す鏡ですから。
男性でも女性でも、なんか色っぽいなっていう人、いるじゃないですか。私が素敵だなー、大人だなーって思う方って、皆さん色っぽいんです。ボンッキュッボンッの悩殺ボディーの美人とか、長身でマッチョな美男子じゃなくても。
それで、私が真っ先に思い出した色っぽい大人が英介さんだったんです。英介さんはマッチョで男っぽいタイプじゃないけど(失礼!)、品があって色っぽい方だと思うんです。
舞台の上の英介さんは、すごい迫力で気を放ってるけど、普段会うと、いつもニコニコ笑顔で穏やかで。そういうところがまた魅力的。
色気って大人になったら自然と身につくものとか、色気も色々とか言ってくれる人もいるけど、ホントにそうなのかしら?それとも、ない人には一生ないのかしら!?
英介さんも、昔は私のように悩んだことがあったのでしょうか?それとも、元からそんな悩みとは無縁の方なのですか?何か秘訣があったら教えて欲しいです。
久しぶりのお手紙なのに、お悩み相談みたいになってしまってごめんなさい。
もうすぐ舞台ですよね。楽しみにしています。
まだまだ秋涼とはいいにくい残暑が続いています。くれぐれもご自愛下さいませ。

夢香さま
拝啓 夢香さん、お便りありがとうございます。この夏を無事に過ごされたご様子なによりです。もう東京ではクーラーのない夏は考えられませんね。でも、クーラーも一晩中つけっぱなしでは……。とにかくお年寄りには体にこたえるあの暑さ。心配になってしまいます。
ところで、夢香さんの作品に「色気がない」といわれた画廊のオーナーさんはおいくつですか。男性でしょうか。
と伺うのも「色気」なんていうものは、ほんとに実体のないもの。十人十色の感じ方があるでしょう。年代や職業によっても違うだろうし。
私は夢香さんの作品は「色気あり」だと思いますよ。「セクシー」ではないけれど「エロチック」ではある。
ね、こう云う風に云い出すと何の事やらわからなくなりますよね。
色気なんて、身につけようとして得られるものではないと思うのですが、どうでしょう。色気のある人になろうとガンバッてる人を見て、果たしてそう感じられるかしら……。
私が「色っぽい」と思って下さって、ありがとう。ちょっと照れくさいけど。
私のプライベートが色気満点ではないのは、夢香さんもご承知の通りですよ。
じゃ、もし私が色っぽいとすれば、それは何でしょう。夢香さんからみて、私のどこが、何が色気? 又、夢香さんにとって、ほかのどんな人が色っぽいんでしょう。
ぜ ひ、教えて下さいな。
役者は華がなきゃ、とか色気が大事とか、昔から必ず言われているし、私ももちろん身につけたいと、こんな中年になっても思ってるんですよ。一緒に「色気」考察してみましょうよ。
あ、そうです。私にとっては、年齢を経た方々に色気を感じることが多いことに気がつきました。
若い芸者さんより、着物が体の一部になってしまったような年配の芸者さんの帯から胸元。歩みをとめて一休みしているおじいさんがふとポケットに手を入れる仕草。
「年輪」とか「粋さ」とか……。ますます、抽象的になってきちゃいましたね。
私には「色気」がゆとりの中に潜んでいるような気がしてきましたが。
夢香さんはどう思います?
もう一つ、最近心に残った私的色気を感じたシーンを思い出しました。
お芝居のお稽古中のこと、ちょっとしたブレイクの時間、私が廊下でコーヒーとたばこで休憩していると、共演の女優さんがあらわれました。二言、三言、とりとめのない会話を交わした後、女優さんは私から離れてお稽古場のドアへ。ふとその時、彼女は足元に落ちている紙くずに気がついて、さらっと拾って去って行ったんです。
それだけのことです。
でも、私には、その誰が落としたかしれないゴミを何気なく、当り前のように拾い上げた瞬間が、ある場面として目に残ってしまっているんですよ。
地味なTシャツにジャージのとても外には出られない、ひっつめ髪の彼女は色っぽかったんです。
夢香さん、どう思いますか?
私が夢香さん自身を色っぽいと思うかどうか……。これは今日は内緒にしておきます。
まあ、画廊のオーナーの言葉は気にせずに、お仕事をしっかりと。
私も今、演出、出演を兼ねる次の舞台のけい古に、がんばってますから。
夢香さんも観に来て下さいね。「色っぽい」舞台になりますから。
ではお返事楽しみにお待ちしています。夏のおつかれ出ませんように……。
※篠井さんのお友達・夢香さんは、架空の人物です。当連載に作品をご提供頂いている、シルクスクリーン作家の藤田夢香さんとは同一人物ではありません。
投稿者 davinci : 2004年09月06日 22:41