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2005年04月15日
ビヨンド・ザ・ロック 6
第六回「幻のロックバンドを追って! コンセプト失敗編」
確かに見た記憶があるんだけど、今となってはデーターもあまり残っておらず、「一体なんだったんだアレは?」と首をかしげるばかり、言わば幻のロックバンドというものがある。
例えばジョンとヨーコのプロジェクト「アースリング」がそれだ。
ジョン&ヨーコと言いながらレノン&オノでないところが大問題なのだ。80年代ジャパニーズニューウェイブに忽然と現れたこの二人組、自らの名を、名乗ったりなんとジョン&ヨーコ!ポッと出の夫婦演歌コンビが進一&昌子を。中野ビタミン奇席出演の新人夫婦漫才が大助&花子を名乗って平然としているに等しい大風呂敷の広げ方である。しかもこのジョン&ヨーコ。チャカポコと鳴るリズムボックスを唯一のオケに、「ピース! ハッピー! フリーダム!」と言った荒井注クラスの基礎英語を連呼する驚異のパフォーマンスで聴衆を呆然とさせた。僕は高校時代、偶然にも、学校指定のネクタイを買いにいった池袋で彼らの貴重なライブ現場を目撃している。「フリーダム!」と叫んだ途端にジョンのクツがポロリと脱げた光景を昨日のことのように思い出す。童貞高校生が見てさえ「……まず…… コンセプトが間違っとる……」と思わせるに十分過ぎるアースリングであった。
コンセプト失敗系としてもう一つ思い出すバンドはアレだ。名前すら覚えていないので、まさに幻のロックバンドとなってしまった。しかし、僕は確かに彼らをこの目で見たのだ。
30年近く前のことであったと思う。公開歌番組をテレビで観ていると、新人ロックバンドが司会に呼ばれて登場した。この時代、ロックがテレビに登場するなど、世良公則のツイストか、リューベン&カンパニーにしか成し得ない偉業と言えた。ロックに興味を持ち始めていた少年の僕は、思わず身を乗り出して彼らの演奏に注目したわけである。
メンバーは確か3人。ギター、ドラム、ベース、ただし、そのバンドには第4のメンバーがいたのだ。
オープンリールのテープレコーダーである。
高さ1m60cmほどの、当時としても大きなもの。思い出せないが、何かきちんと名前が付けられていて、司会者は律儀に“彼”の名をコールしたようにも思う。しびれるのは、このテープレコーダー、二つのオープンリールがちょうど目玉に当る位置についていて、遠目に見ると、人型ロボットのような形状をしているのだ。なるほど第4のメンバーはロボットか!って、ただのテープレコーダーなんだが…… で、“彼”のテープに録音させたシークエンスに合わせて、バンドが演奏するわけだ。YMO登場の数年前、まだシークエンサーもない時代に、考えてみればデジロックの草分けといったサウンドスタイルである。とは言え、それだけのことだ。何も、わざわざステージにロボット型のテープレコーダーを登場させ、あまつさえメンバー呼ばわりする程のこともないではないか。
どのような楽曲であったかはまったく記憶にない。覚えているのは…… 忘れようもないのは、彼らの去り方である。
楽曲はシークエンスを残して生演奏部分が先に終わった。すると人間のメンバーたちは、まだ舞台上であるというのに、それぞれギター、ベースを肩からおろしてしまうのだ。ドラマーはドラムセットから立ち上がった。そして三人はまだ回転を続けているテープレコーダーの方を向くと、一斉に、笑いながら手を振り始めた。
「バイバイ! 一人でがんばれよ!」
「俺ら先おつかれで! 後で楽屋でな!」
「悪い! 一足先に一服してっからよ!」
という意味の、それはパフォーマンスであるらしかった。テープレコーダー相手に。
誰もいなくなったステージで、巨大なオープンリールのテープレコーダーがしばらくの間、もの哀しく回転し続けていた。
やがて、暗転。その後、司会者がいかなる機転を効かせて客席のまったりとしたムードをとりつくろったのか、残念ながらこれも記憶に無い。ただ、去り際のメンバー(人間の方)たちが、手を振りながら、ひたすらに、恥ずかしそうな表情であったのをまざまざと思い出すことができる。
「やらされてる感」
という、ロックバンドが断じて身にまとってはならない言葉を、哀しさを、その時始めて、僕は知ったのであった。
P.S. ところで前回のメンバー募集、まだ一人しか応募がない…… しかも、ノイズミュージシャンから。
もう一つP.S. 月刊『ダ・ヴィンチ』誌連載『縫製人間ヌイグルマー』に誤りがありました。と言っても欄外部分。132ページ「今日、」とあるのは「今月」135ページ「東京新宿ジュンク堂」とあるのは「24日東京新宿ジュンク堂」の誤りです。各自赤ペンで直しておいてね。24日にサイン会があるんですよう。くわしくはHP(http://www.junkudo.co.jp/)見てね。
愛のブー劇場
…少々お待ち下さい…
投稿者 davinci_blue : 18:41







