2008年03月18日(火曜日)
【社会】 『日本沈没』の楽しみ方
有栖川です。二日目は社会。
学生時代、私が最も好きだった科目です。特に小中学校の頃は、地図好きのせいもあって地理が大のお気に入りでした。全国各地の山だの川だの特産物だのを聞くだけで、日本中を旅行している気分になって、わくわくしたものです。中学校になると学習範囲がワールドワイドに広がり、世界旅行になったのでなおさら楽しめました。
そんな私が中学二年の時、ある本が爆発的なベストセラーになりました。小松左京の『日本沈没』です。おそらくわが国で最もよく読まれた長編SFでしょう。私は、この小説が大好きでした。今でもたまに手に取り、拾い読みをすることがあります。
ご存じのとおり、未曾有の地殻変動によって日本列島が海面下に没してしまう、というお話です。SFの巨匠は、当時最先端だった科学知識を動員し(もちろん小説的に誇張が施されていますが)、もっともらしく日本を沈めました。地学や物理学の知識がない者には「なんとなく判る」という程度しか理解できない説明でしたが、それでも充分面白かった。
もとよりこの作品は、科学知識を駆使したハードSFというより、その形式を借りて日本民族の有り様を考察した全体小説です。その意味から、人文社会学的な興味があふれているのですが、十四歳の少年には深く読みきれない。ただ、少し変わった読み方をしていました。
『日本沈没』ほど、たくさんの地名が出てくる小説はまれでしょう。どこでどんな異常が観測され、どこで地震や噴火が起き、どこからどんなふうに沈んでいくのか、という破滅の経過が克明に描かれているからです。同書がお手元にあったら、ちょっと開いてみてください。地名、地名、地名のオンパレード。私は、地図帳と首っぴきで読み進んだほどです。
二〇〇六年に『日本沈没』は再映画化されました。もちろん、観ています。その中で、豊川悦司扮する田所博士はカタストロフを予見して悲痛な叫びをあげます。
「プレートの断裂は北海道の南部から始まる。九州の出水断層帯も危ない。阿蘇が噴火するだろう。四国から紀伊半島に連なる中央構造線が裂けて南側は沈んでいく。日本の活断層はそのエネルギーに耐え切れず次々に割れていく。本州中央部の糸魚川静岡間のフォッサマグナが裂け始めたら、その時はもうおしまいだ。富士山の大噴火とともに、日本は一気呵成に沈んでいく」
うーん、耳に心地よい。
私、これを一度聞いただけでほぼ正確に暗記し、家でよく物真似をしていました。それぐらいの沈没ファンです。地理好きにとって、あの小説はまたとないご馳走なのです。