2008年03月18日(火曜日)

【HR】 生温い業界

 連続で、今日も飛行機を飛ばしにいく。昨日よりも少し風があって、むしろ操縦は面白かった。友人がオートジャイロを持ってきていたので、途中で少し操縦をさせてもらったけれど、普通の飛行機とほとんど同じ感覚だった。ただ、姿勢がわかりづらい。のんきで長閑な話をしてきた。花粉が凄いので、ずっとマスクをしている。

 お昼過ぎに戻り、今度はスバル氏と繁華街へ出かける。彼女は古着を見るため。僕は、パーツの買い出し。といっても、スイッチや電池ボックスくらいで、大したものではない。スバル氏と合流してからハンバーガを買って、公園で食べた。本当に暖かい。 
 昨夜、突然20年くらいまえの出来事を思い出し、今考えると、あれは自分が悪かったな、と反省をしたので、今日それをスバル氏に謝ったら、彼女もしっかり覚えていて、けっこう本気で腹を立てていた。昔の自分にたちまち感情移入できるようだ。

 昨日、出版社の人たちとおしゃべりしていたとき、僕が言ったこと。
1)どうして、同じ文庫でカバーだけ掛け替えて、複数の出版社から同じ本を出すような方式がないのか。あるいは、同一作家の文庫は、どの出版社でも同じデザインにすべきではないのか。どういう理由で出版社別のラベルにそんなに拘るのか? (といって、僕自身はべつに不満は全然ない。将来的な問題として)
2)小説もエッセィも、原稿料が同じなのがおかしい。小説でも、長編、短編、ショートショートの区別なく、原稿用紙の枚数で原稿料が決まっているのは変ではないか? (といって、僕はべつに不満はない。もうどうだって良い)
 たとえば、各方面から「書いて下さい」という熱心な依頼を受け続けてきたが、この10年で一度として「当社は原稿料を高くできます」「印税のパーセンテージを上げられます」と提案してきたところはなかった。そういう概念が、そもそも出版社にはないのだ。なんというジェントルで生温い業界だろうか、と初めは思った。
 電子出版がこれから爆発的に普及して、ついには出版社や書籍の流通システムが不要になる時代が来る(たぶん10〜20年以内に)、ということをまだ本気にしていないみたいだ。
 アメリカでは脚本家がストライキをしたが、日本も、現在の電子出版の印税15%は絶対に低すぎる。まだ数が少ないから問題になっていないだけだ。またシステム立ち上げにイニシャルコストがかかるから、現在はしかたがないにしても、少なくともこの倍にはしておかないと、出版社は作家に逃げられるだろう。人気のある作家ほど印税を上げる必要がある。作家が自分でネット配信したら100%が収入になるのだから。
 「小説とエッセィと、どちらをお書きになりたいのですか?」という質問を受けた。うーん、どちらもべつに書きたいとは思わない。これまでも、書きたいから書いていたわけではないし、趣味でもない。きっと、書きたい人が書き、本を作りたい人が作っている、というのがこの世界の常識で、書ければ幸せ、本が出れば嬉しい、そういう趣味の世界だったのだ。大変居心地は良いけれど、遠からず破綻するだろう、少なくともビジネスとしては。

【社会】 『日本沈没』の楽しみ方

 有栖川です。二日目は社会。
 学生時代、私が最も好きだった科目です。特に小中学校の頃は、地図好きのせいもあって地理が大のお気に入りでした。全国各地の山だの川だの特産物だのを聞くだけで、日本中を旅行している気分になって、わくわくしたものです。中学校になると学習範囲がワールドワイドに広がり、世界旅行になったのでなおさら楽しめました。
 そんな私が中学二年の時、ある本が爆発的なベストセラーになりました。小松左京の『日本沈没』です。おそらくわが国で最もよく読まれた長編SFでしょう。私は、この小説が大好きでした。今でもたまに手に取り、拾い読みをすることがあります。
 ご存じのとおり、未曾有の地殻変動によって日本列島が海面下に没してしまう、というお話です。SFの巨匠は、当時最先端だった科学知識を動員し(もちろん小説的に誇張が施されていますが)、もっともらしく日本を沈めました。地学や物理学の知識がない者には「なんとなく判る」という程度しか理解できない説明でしたが、それでも充分面白かった。
 もとよりこの作品は、科学知識を駆使したハードSFというより、その形式を借りて日本民族の有り様を考察した全体小説です。その意味から、人文社会学的な興味があふれているのですが、十四歳の少年には深く読みきれない。ただ、少し変わった読み方をしていました。
 『日本沈没』ほど、たくさんの地名が出てくる小説はまれでしょう。どこでどんな異常が観測され、どこで地震や噴火が起き、どこからどんなふうに沈んでいくのか、という破滅の経過が克明に描かれているからです。同書がお手元にあったら、ちょっと開いてみてください。地名、地名、地名のオンパレード。私は、地図帳と首っぴきで読み進んだほどです。
 二〇〇六年に『日本沈没』は再映画化されました。もちろん、観ています。その中で、豊川悦司扮する田所博士はカタストロフを予見して悲痛な叫びをあげます。
「プレートの断裂は北海道の南部から始まる。九州の出水断層帯も危ない。阿蘇が噴火するだろう。四国から紀伊半島に連なる中央構造線が裂けて南側は沈んでいく。日本の活断層はそのエネルギーに耐え切れず次々に割れていく。本州中央部の糸魚川静岡間のフォッサマグナが裂け始めたら、その時はもうおしまいだ。富士山の大噴火とともに、日本は一気呵成に沈んでいく」
 うーん、耳に心地よい。
 私、これを一度聞いただけでほぼ正確に暗記し、家でよく物真似をしていました。それぐらいの沈没ファンです。地理好きにとって、あの小説はまたとないご馳走なのです。

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