2008年01月31日(木曜日)

【理科】 ウィーケスト・リンク

 英語の諺だったかな。weakest linkとは、たとえば、鎖の全体強度が、連なっている環の一番弱い1つで決まってしまう、という意味だ。2007年7/18の「社会」でも触れている。
 金属などは、引張試験で強度を測定する。その強度とは、最大応力がかかっている範囲に確率的に存在する欠陥によって決まる。直列になっている構造では、1つ弱い部分があれば、そこで破断する。たとえば、同じ鎖でも、短いものと長いものを引っ張って比べると、長いものの方が弱い。応力が作用する範囲が広くなり、弱いものが存在する確率が高くなるためだ。これは、大きな範囲を捉えるほど、材料が見かけ上均質になっていくために強くなる、という作用と相反する寸法効果の1つである。
 オーディオを買い揃えたとき、デッキ、プリアンプ、メインアンプ、スピーカとつなげると、一番性能が低いものの音が出る、といわれている。高性能のものが弱い部分をカバーすることはない。これも、直列になっているためだろう。
 ウィーケスト・リンクの考え方は、「弱い部分を補強せよ」という思想である。これは、前回に書いた「壊れ方のデザイン」と相反する。どこが違うのか。まず、構造が単純な直列のものはそれほど多くはない。また、「強度」と「安全」のどちらを求めるのか、という選択がある。
 建物や橋などの構造物に使われる鋼材は、「軟鋼」と呼ばれる強度の低い鉄である。これは、内部に欠陥が多く、そのため力が強度を超えやすいが、材料内部の構造は鎖のように直列ではないため、微視的な局所破壊が生じても、他の部分に応力がすぐに分担される。強度は出ないものの、こうして力を負担する部分が残っているため、小さな破壊が次々ばらばらに起こって柔軟な変形をする。弱いけれど粘り強い破壊性状を示す。これが「欠陥」を持っている利点だ。
 一方、金属の強度をどんどん上げていくと、軟鋼の何十倍も強い鉄が作れる。こういった高強度鋼が必要な分野もある。しかし、これらはほとんど変形せず、つまり伸びにくい。衝撃に弱く、一気に爆発的に破断する傾向がある。
 身近な材料では、ガラスがそうだ。ガラスはコンクリートや木材より数倍強度が高い。また、引っ掻いたときの硬さも鉄より高い。しかし、構造が均質なため(だから透明なのだが)破壊が一気に生じる。強度が高いから、とガラスで柱を作った家を想像してみよう。

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