2007年12月18日(火曜日)
【算数】 小説家になれる確率
西尾維新です。
昨日、小説を書けることと小説家になることはまったく別の話だと締めましたが、では、ここにひとりの若者がいたとして、彼または彼女が小説家になれる確率はいかほどなのかを計算してみましょう。確実な方法はなくとも確率は予想できるはずです。ちなみに夢を抱く若者のやる気を削ぐもっとも効果的な方法は、その夢の困難さを説くのではなく、『そんなことは簡単だ。適当にやっていればできる。あんまり頑張るな』というように、その夢を実現容易なものとして語ってしまうことだそうです。確かにこんなことを言われたら挑戦意欲はなくなりますよね。そういう意味では、これから述べる考察は、ともすれば若者のやる気を削いでしまう結果になるのかもしれませんが、小説家になること、これ自体のハードルはそう高くはありません。人によっては、小説を書くことのほうが難しいくらいでしょう。
まず、競争率が低い。これが重要です。小説家になりたいという人は多くとも、小説家になろうという人はごくわずかなのです。新人賞の総応募数に気圧されてはいけません。新人賞の応募作品の大半はそもそも小説としての体をなしていないそうですから、事実上カウントせずに計算することが可能です。すると小説家になるための競争率は、たぶん企業就職や公務員試験の競争率とトントンか、あるいはちょっと低いくらいの数値に落ち着くでしょう。
そして再挑戦が許されていて、かつ年齢制限がない。これが他の職業と大きく違うところです。極端な話、80歳になってからでもデビューすることが可能で、むしろそれが売りになったりさえします。長期間挑戦し続けていれば、彼または彼女に時代が追いつくという可能性もあります。さすがにそれは考え過ぎでしょうが、書き残した小説が死後にブレイクするかもしれません。
まあその他もろもろ総合的に見て、任意のひとりの若者が小説家になれる確率は、一生(死後含む)を通して3割くらいはあると思います。
面白い小説を書けなければ小説家にはなれないだろうって? いえ、書く小説が面白くなくとも小説家にはなれます。ただ、小説家であり続けることが難しいだけです……逆に言えば面白い小説が書けるからと言って小説家になれるわけでもないのですが、でもまあ面白い小説が書けるなら小説家になんてなれなくてもいいじゃないですか。
明日はそのあたりを。