2007年10月20日(土曜日)
【理科】 エレベータが落下したとき
あわや子供が自動車に轢かれる、というとき、鉄腕アトムが猛スピードで飛んできて救い出す。そういった場合、自動車よりもアトムの方がスピードが速いわけで、子供はアトムに抱かれた瞬間に即死するのではないか、という疑問を、少し科学的な想像ができる人は抱くはずだ。
よく話題になるのは、エレベータのロープが切れて落下したとき、地面に着く直前にジャンプしたら助かるのではないか、というもの。
まず、落下しているエレベータがもし抵抗なく自由落下していたら、箱の中では相対的に無重力状態になり、人間は床に立っていられないから、ジャンプすること自体が難しいだろう。
しかし、レールと車輪の摩擦があるから、自由落下よりは遅いと考えれば、僅かに下向きの重力があり、充分にジャンプが可能かもしれない。
ちょっとしたジャンプでは、落下速度を到底打ち消せない。たとえば、落下速度は1秒ごとに約10m/s加速するので、3秒で30m/sに達する。秒速30mといえば時速100kmにもなる。
「地面に着く寸前にジャンプしよう」と考える余裕があるわけだから、少なくとも3秒くらいは落下していると思われる。ちなみに、この間に落下する距離は約45m。ちょうど12階くらいの高さだ。つまり、時速100kmの速度で飛び出すようなジャンプをしなければ、速度を打ち消せない。ちなみに、地上でこのジャンプができる人は、12階建てのビルディングくらいの高さまで到達できる計算になる。
こんな凄いジャンプをしたら、(少しタイミングが早すぎるだけで)下手をするとエレベータの天井に激突することになるので、エレベータが地面に到着するまえに即死する恐れがある。ジャンプして、天井に達するほんの僅かな時間、具体的には、0.1秒くらいの間に、エレベータが地面に到着して急停止しなければならない。まさに絶妙のタイミングというやつだ。
しかし、まだ問題はある。はたして、時速100kmのジャンプという加速に耐えられる躰であるか、という問題だ。自分のジャンプの加速で即死するほど弱いなら、ジャンプなどとうてい無理だ、という意見もあるだろう。そのとおりである。あるいは、そのジャンプに耐えられる躰なら、そのままジャンプしなくても激突に耐えられるのではないか、という意見もあるだろう。もっともである。
ロケットエンジンを背負っていて、これが完全にコンピュータ制御で精密に作動するものだったら、助かる可能性はある。少なくとも、エレベータの箱の高さと同じ厚さのクッションの上へ落下するくらいの加速度に押さえることは物理的には可能だ。確実なのは、まず天井を破壊し、エンジンによるジャンプでそこから飛び出すことだろう。