2006年12月11日(月曜日)

【社会】 豆まきの話

 高田崇史(たかだ・たかふみ)といいます。
 何はともあれ、簡単に自己紹介させていただきます。
 本業は薬剤師なのですが、ひょんなことからミステリを書くことになりました。そして「メフィスト賞」という破天荒な賞をいただいて森博嗣さんとご縁ができ──というより、森さんがいらっしゃったからこそ「メフィスト賞」があって──今回「MORI LOG ACADEMY」で特別講師辞令をいただきました。今日から5日間、よろしくお願いします。

 では、初回は社会です(偶然ですが洒落です)。
「節分」というのは、もともと立春・立夏・立秋・立冬の前日の呼称だったのですが、現在では特に立春の前日を指す名称になっています。
 そしてその日には、多くの人たちが家から鬼を追い祓うために豆まきをします。この行事は昔「追儺(ついな)」といって、宮中から疫病を追い祓うために行われていたのですが、それがいつの間にか、ぼくたち一般庶民の間にも、自分の家に棲み着いている鬼を追い祓う行事として広まっていきました。
 さて、ここでちょっと想像していただきたいのですが、立春とは名ばかりで、季節は真冬。外は凍えるような北風が吹いています。そこに鬼たちは、いくら毛皮とはいえ虎の皮のパンツ一枚で追い出されるのです。BGMは、もちろんヴィヴァルディの「四季〜冬」でしょう。
 しかも彼らは、非常に獰猛なのかといえばそんなこともなく、たかだか子供たちの投げつけてくる豆粒で逃げ出してしまうほど気弱な生き物なのです。それほど簡単に追い出すことができるのならば、せめてもう少し暖かくなるまで待ってあげることはできないのでしょうか。実に涙をそそられる話です(但し一部には「鬼は内」とかけ声をかける寺社も存在していますが)。
 また、日本で初めて相撲を取ったのは「鬼」と呼ばれている人たちでした。ちなみに彼らの子孫には、天神さまの菅原道真がいます。
 でも、節分祭には必ずといってよいほど、お相撲さんたちが高い舞台の上から豆をまいて、自分たちの職業の始祖である「鬼」を追い祓うのです。これは実に不思議な構図だと思いませんか? 一体どうしてなのでしょう。
 このように、よく考えるとおかしなことが、ぼくたちの日常的な風習の中にはたくさんあります。そしてその意味をもう一度じっくり考え直してみると、それまでとは全く違った世界が垣間見えてくるはずです。

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