2006年03月31日(金曜日)

【HR】 何故続けているのか

 晴天だが風が凄い。とても寒い。明日から暖かくなるそうだ。それが今日の希望である。
 午前中は、スバル氏とパスカルと一緒にホームセンタへ行った。花を沢山買った。それから、この頃、パスカルが敷地から出て、裏の森林へ行くことがあるので、通り道を塞ぐための柵を買ってきた。これでもう、タヌキが庭に入ってこられなくなるかもしれない。近所の犬もときどき遊びにくるのだが、それもなくなるかもしれない。猫は関係ないだろう。別に、パスカルが外へ出ることは良いのだが、帰ってこられなくなる可能性があるためだ。かなり方向音痴だし、運動能力も低いように観察される。
 ホームセンタなどで、たこ焼きが売られていると90%スバル氏がこれを買う。それで、けっこうよく食べる。たこ焼きは近頃レベルが上がって、どこで食べてもハズレに当たる確率がかなり低くなった。しかし逆にいえば、意外な味には出会えない。以前は、ちょっと危ない人たちが作っていたりしたものだが、今はチェーン店が増えた。全般に、少々軟らかすぎるというか、ふわっとしすぎているように感じる。もう少しかりっとしているのが、たこ焼きらしい。まあ、流行なのかもしれないが。
 ホームセンタで買ってきた花を植えたり、柵を据え付けたりするのは、明日以降。今日は寒すぎる。だから、ガレージで工作をした。昨日はそれほどできなかったのだが、たぶん体調が悪かったせいだろう。小説や研究は体調が悪くてもそこそこできるけれど、工作はそうはいかない。これが趣味というものの傾向である。先崎氏も、将棋の勝負には体調はほとんど影響しない、と語っていた。

 デビューして10年になる。まさか自分が小説なんか書いて、それでお金を稼ぐことができるとは思ってもみなかった。人生わからないものである。しかし、イラストや絵で食べていけるとは考えていなかったし、まして模型を仕事にしようと思ったことは一度もない(とうてい無理だ)。一番、仕事になるかも、と考えたのは、やはり文章で、それはもちろんノン・フィクションだ。なにか、社会で需要のあるものが書けるかもしれないな、とぼんやりと想像した程度だが。
 デビューした年に、大学の給料の倍の額の印税をもらった。次の2年で、大学にあと30年間勤務してもらえる給料の総額くらいを稼いだ。さらに次の2年で、一生かかっても使い切れない額を得たと思う。だから、この時点(5年まえ)で既に仕事をする必要はなくなったのだが、その後も仕事を続け、収入は増え続けた。何のために働き続けているのだろうか?
 研究もそうだった。最初は、明らかに「就職」だった。結婚と同時だったので、家族が食べていくために勤務をしていた。しかし、稼ぐ必要がなくなっても研究は続けている。研究は趣味だといってしまえば、それまでだが、小説はとても趣味とはいえない。
 おそらく、小説や研究の分野が、ゲームの世界みたいに、僕以外に人間が関与していないものならば、とっくに手を引いていただろう。続けているのは、ようするに、まだ会っていない人間がいる、という希望(あるいは予感)みたいなものだろうか。
 トヨタは、クラウンを作った。クラウンは多くの人の欲望を満たした。もっと優れたクラウンを作ることがトヨタの使命になった。しかし、トヨタはあるときカローラを作った。カローラは、クラウンよりも小さく安く、シンプルな車である。クラウンのユーザは、「どうしてそんなレベルの低い車を作るのだ?」と怒ったかもしれない。しかし、今まで車に乗れなかった人たちの需要にトヨタは応えた。まだ会っていない人間がいる、という希望とは、たとえばこういう意味である。
 ちなみに、トヨタの車を買ったことはない。上の文章はもちろん比喩である。僕は、シェアを広げるために書いているのではない。ただ、小さな予感に導かれているにすぎない。結果として、まるで気のせいで、実はなにもなかった、という可能性も大きい。それを見切ることができたら、当然ながら、作家を廃業するつもりである。

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