2005年11月19日(土曜日)
【HR】 原稿料と解説
風の強い土曜日。午前中はスバル氏とスーパとホームセンタへ。スーパとホームセンタが一緒になっている超大型店が郊外にあって、どこも客が意外に入っている。1000台くらい駐まれる駐車場がいっぱい。車を誘導するおじさん(おじいさん?)が赤い棒を持って、あっちへ行け、こっちへ行けと一所懸命なのだが、「そのまえに貴方が邪魔です」と言いたいことが多い。おそらく、近所の隠居老人が休日だけ働いているのだろう。地域貢献の形か。
昨日の続きで、原稿料のことを書こう。メールで質問してくる人がわりと多く、きっと、作家志望、ライタ志望の方だろう。
原稿料の規準は、400字詰め原稿用紙の枚数で、小説雑誌では、1枚だいたい4000円〜7000円くらい。小説以外の週刊誌、月刊誌などでは、10000円やそれ以上のところもある。新聞はさらに高い。これは、イラストや漫画に比較すると、かなり高いと思われるが、それだけ文章の価値が認められている証拠だろうか。
漫画でも、1枚は10000〜20000円だと聞いている。漫画の1枚は、文章の20倍は時間がかかるだろう。しかもアシスタントも必要で、漫画の場合は原稿料だけでは、ほとんど黒字にならないそうだ。
漫画は、しかし、部数が多いだろう、というのも、かなり過去の話であって、この頃は厳しいようだ。なにしろ、1冊の単価が安いので、同じパーセントの印税でも、小説の単行本の4分の1くらいになってしまう。
原稿用紙で500枚の小説作品を雑誌に連載すれば、トータルで250万円ほどの原稿料になる。それが本になって出版されれば、印刷とほぼ同時に印税がもらえる。1冊も売れなくてももらえる。また、人気が出て沢山売れれば重版になり、そのつどまた印税が支払われる。ノベルスになったり、文庫になったり、形態が変わって出版されれば、本代×部数×0.1の印税がもらえる。
こうして書くと、非常に良い商売みたいに思えるが、そんなに簡単だったら、みんなやっているだろうから、どこかに難しさがあるのだと思う。それをこれから発見していきたい。
11月はもう1冊文庫が出るのをすっかり忘れていた。中公文庫で『ナ・バ・テア』である。単行本が昨年だったから、普通よりも文庫化が早い。大変シンプルなデザインで洒落ている。それよりもなによりも、今回の解説がよしもとばななさんだ。
文庫には解説なるものがつく。今まで、僕は自分の本の解説を同業者である小説家にお願いすることを極力避けてきた。例外として、筒井康隆氏、島田荘司氏、綿矢りさ氏他数名がいるけれど、大部分は別の分野の方である。また、書評家と呼ばれる方にお願いすることもできるかぎり避けてきた。その理由は、小説家や書評家の書く解説は、文字どおりの解説で、すなわち作品が作られた裏舞台を分析する傾向にあるからだ。これは、作品世界に浸った直後の読者が読むのに相応しいとは思えない、とかつて読者だった僕自身が感じていたためである。
しかし、それでも、筒井氏や島田氏や綿矢氏の分析の深さと鋭さは、それ自体が創造的な領域だったし、また、今回のよしもと氏の文章は、そんななかでも本当に凄いと思った。何が凄いのかというと、やはり「文章の力」である。彼女の作品を読むたびに圧倒されるものだ。難しい単語や言い回しをまったく使わずに、これだけの力を発揮できる書き手はまずいないだろう。英語に訳しても、力は衰えないにちがいない。だからこそ、世界中で読まれているのだとわかる。
というわけで、これは幸運な本になった。
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