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2005年04月06日
同人誌の枠を離れ、大きく展開したい!
『APIED』(アピエ)は、半年に1巻発行のミニ文芸誌です。海外文学の一冊、たとえばカフカの『変身』を取り上げ、十数人の執筆者に、エッセイや詩、評論や創作などを、自由に書いてもらうスタイルを取っています。思いのままに好きなことを書いてOKなのですが、テーマとした小説に、どこかで繋がっているのが基本条件です。多彩な文章で綴る、誌上読書会が狙い目。
今までに特集したのは『変身』『罪と罰』『異邦人』『ガリヴァー旅行記』『星の王子さま』そして『人形の家』。みんな眩しすぎるクラシックな世界文学。昔に読んだ大作家たち。こんな名作群を料理できるはずもない私が、厚顔無恥にも傑作にチャレンジしているのであります。基本的に私一人の編集、発行なので、本選びや新しい書き手探しには緊張しますが、毎回ワクワクドキドキで楽しく続けています。
閉鎖的になりがちな同人誌ではなく、あくまで全国書店での販売が目標。マイナー路線とあきらめず、多くの未知の読者に手に取っていただきたい、との思いです。『APIED』をガイドに、永遠に新しい過去の物語を、今こそフレッシュに読んでほしい。こんなふうに志は高いのですが、ゆっくりやっています。a piedはフランス語で「歩いて」の意味なので、寄り道の多い私にはぴったりのタイトルです。
おしゃれにしたいので、銅版画家の山下陽子さんに表紙絵を描いてもらい、本文にも絵や写真、イラストを多用して工夫しています。
映画やインタヴューの増刊号を出したい、付録をつけたり、カラーページもいいな……と、予算を顧みず企画やプラン(妄想?)にぼんやり時間を過ごしている状態。しっかりしなくちゃ。
次号は『チャップリン自伝』を選びました。夏には発行予定です。よろしく。

絶版、品切れ、また絶版

『ベイスボイル・ブック』
井村恭一
新潮社 品切れ
最近『文学賞メッタ斬り!』(大森望・豊?由美 PARCO出版)を読んで興味を持った『ベイスボイル・ブック』を読んでいたところ、新作『不在の姉』(文學界・9月号)が芥川賞候補にあがったということで驚いた。
私は文学部の出身でもないし、「好きな作品を繰り返し読む」といったタイプの読書好きなので『文学賞メッタ斬り!』の注釈で「マジック・リアリズム」という用語を初めて知ったくらいなのだけれど、そういうものを知らないでただ作品を鑑賞する読者としては『ベイスボイル・ブック』は私の好きな倉橋由美子『スミヤキストQの冒険』(講談社文芸文庫)、『アマノン国往還記』(新潮文庫)の世界を連想させ、非常に興味深く面白く読めた。
倉橋由美子の作品も絶版や在庫切れなどで非常に入手しづらいものが多い。この『ベイスボイル・ブック』もまた絶版ということで非常に残念に思う。今回、芥川賞候補にあがったことで本作品の図書館での貸し出しも増えたことと思われるが、よい本は手元に置いておきたいものである。文庫化されるなど、再度出版されないものだろうか。
雪女●青森県出身の派遣社員。「頻繁に図書館を利用しているので『今日は前回と同じ格好ではなかったか』ということを一応気にしています」
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加戸智恵美●島根県在住の25歳、事務員。「初投稿にして初掲載!! 感激です。涙」
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若くして亡くなった彼の足跡

『サハラに死す 上温湯隆の一生』
長尾三郎/編
講談社文庫 品切れ
教科書に載っていないのが、はがゆいくらい感動した一冊は、上温湯隆の『サハラに死す』です。ノンフィクションで若くしてアフリカ横断の旅の途中、亡くなった彼の文章は大人になりきれず、自分の進むべき道がわからずもがく青春期の皆の苦悩を代弁してくれています。ネットでも売ってなく図書館で何度か借りて読んでいます。この本で泣けない人は若者の心を永遠に知ることができないでしょう。引きこもりやニートと呼ばれる人たちにこそ読んでもらいたい珠玉の作品です。
河合智子●北海道在住の26歳、家事手伝い。「今、出版社に依頼され小説を書いています。みなさんと書店でお会いできるでしょうか? お楽しみに」
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オタクの冒険物語

『アキハバラ@DEEP』
石田衣良 文芸春秋 1700円
小学校以来、長いこと小説や物語から離れていた僕がこの長編小説を読もうと思ったのは、特別な心境の変化があったからではなく、本屋で僕を呼ぶ声が聞こえたからでもなく、ただ友人に薦められたからだ。
しかし本を読み始めると、僕はどんどん話に引き込まれてしまった。主人公は、不潔恐怖症、コスプレ喫茶のアイドル……病気のオタク青年たちだ。彼らは協力して秋葉原の片隅にアキハバラ@DEEPという会社を作り、ついにはインターネットに革命を起こすことになる。一見荒唐無稽な起業物語だが、そうではなく主人公たちの青春物語である。どこにも居場所を見つけられずにいた主人公たちが、違いを認め合い、助け合いながら可能性を追求する場として生まれたのがアキハバラ@DEEPなのだ。また、仕事を進めていくなかで初めはほんの思いつきだったことが、だんだん大きな話になっていく過程は興味深い。その時々に彼らがどう考えどう行動するか、そこにアキハバラ@DEEPというコミュニティの魅力が示されている。とかく無機質で表面的と言われがちな、現代社会・ネット社会を舞台にこんなに心温まる物語が作れたことに僕は驚いた。また、それは今を生きている僕に対する耳の痛い指摘でもあった。
この小説の面白さに、リアリティーとフィクションのバランスが挙げられると思う。秋葉原という実在する街を軸に、ありったけのリアリティーを与えているが、同時に全くの夢物語も詰め込まれているのだ。秋葉原を少しでも知る人ならニヤリとする描写の数々、今を強く意識させる設定の中で、ストーリーが大胆に展開していく。
それはハラハラドキドキの冒険物語のようであり、現代を舞台にしたファンタジーのようでもある。
ポディマ・ハッタヤ●栃木県在住の21歳、 大学生。「気が付くともう4年生、研究室で右往左往する毎日です」
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えみき●福岡県出身の16歳、高校生。「レシピを見らずにはじめてチョコパイを作ったらモスラの幼虫のようでした」
*「〜らず」って福岡弁です。
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ユダの教えてくれたもの

『駈込み訴え』(『走れメロス』所収)
太宰 治
新潮文庫 420円
美しい。『駈込み訴え』の主人公はくらくらするほど美しかった。
この本を読む半年ほど前、三浦綾子の『塩狩峠』を読み、私は他人のために自らを犠牲にする主人公の信夫も美しいと思った。しかし読後に一つの疑問が浮かんだのも事実であった。「確かに信夫は素晴らしいが、彼の信仰するキリストはそんなに偉いのか」と。私はそれほど多くキリスト関連の本を読んだわけではないが、キリストの様々なエピソードを知るたびに、彼が本当に神としてあがめられるに値する人物なのかと罰当たりなことを考えてしまうのだ。しかし今、キリストは世間一般に神とみなされている……。そのような私のもやもやとした気持ちを『駈込み訴え』の主人公は私に代わって論理づけ、述べたててくれた。私は疑問を抱きつつも、何もしなかった。だが主人公は生涯いや少なくとも2000年ほど背信者と言われることになるのに、自己の主張を通したのだ。その訴えは愛憎にまみれ、主観に満ちたものなのかもしれない(私はそうは思えないが)。それでも主人公は駆け込んで訴えた。何と美しい……。
『塩狩峠』は私の道徳心を揺さぶった。『駈込み訴え』はその奥の私の精神を揺り動かしたのだ。嗚呼、主人公・イスカリオテのユダよ、よくぞここまで訴えてくれた。
くわがきあゆ●京都府在住の18歳、学生。「文章採用を知らせる電話を、初め何かの勧誘だと思って受けた母はダ・ヴィンチの名を聞いた途端丁寧な口調に豹変しました」

陸に住む魚

『たい焼の魚拓』
宮嶋康彦
JTB 1575円
寒い寒い冬、ピープー風に吹かれていると無性に食べたくなるものがある。そう、たいやきだ。肉まんや、ピザまんといった、いわゆる中華まんの魅力も捨てがたいが、焼きたてのたいやきの香ばしい匂いに、勝てはしないのだ。
この『たい焼の魚拓』は文字通り、日本全国のたい焼の紹介とその魚拓を集めた本。数々並ぶたい焼きの魚拓を見ていると、大きいたい焼きや小さいたい焼き、身体が反ったたい焼きに、10匹二千円もする高級たい焼き、ムツゴロウみたいな珍しい形たい焼きまで、本当にたくさんの種類があるなぁと嘆息する。
隣に添えられた文章は、そのたい焼き屋の雰囲気と歴史を叙情あふれる文章で伝えてくれる。まるで店先で出来上がりを待っているような錯覚を覚え、ヨダレがとまらない。
もう冬も終わるが、あと三回はたい焼きを食べるぞ!と、大分丸くなった腹をさすりながら思うのだ。
39歳、会社員。「冬が来るたびにたい焼きを食べ続けるおかげで、年々体重が増加の一歩。どうにかしてやせないと」
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働く男のカッコよさ

『火天の城』
山本兼一
文藝春秋 1600円
プロジェクトXを見て感動したことのある人ならば、必ずやこの本のよさをわかっていただけるはず。働く男ってなんて格好いいんだ!
私は一つのことを究めようと努力している人の話が好きで、1年くらい前から時代小説にはまったのも職人気質に憧れたからなのですが、『火天の城』を読むと自分も真剣に働かなきゃと仕事に前向きになれます。
驚くべきは、「できないことはできない」と言う、主人公の宮番匠、岡部又右衛門以言のプロ根性です。熟慮して不可能だと判断したことには難しいときっぱり言い、それでもやれと命じられれば「腹を切る」とまで言い切る潔さ。もちろん自分の全てをかけての努力の上での話なのですが、ここまで仕事に命をかけられるものなんだと胸が熱くなります。
人の上に立つ苦しさも描かれています。部下を持つということは自分の人生への責任だけじゃなくなるから、腹くくらないとやっていけないものだと、自分がそういう立場になってきたので特に痛感してます。全てをのみこめる以言はすごいと思う。こんな風に強く、大きく、逞しくなりたい。
そして、私はここで号泣したのですが、木曾上松の大庄屋甚兵衛が御神木を運び出す箇所はすごい!
命をかけて、約束を守る。人間ってここまで真摯に生きられるものなんだと、思い出すたびに鳥肌がたちます。
まだこの本を手にしていない方は、是非この場面だけでも読んでほしい。詳しい説明はしませんが、この場面だけでも『火天の城』を購入する価値があります。
天才は天才を知る……自分の仕事に誇りを持った男たちだからこそ、わかりあえる。なんて羨ましいんだ。私も自分の仕事のプロになりたい。
失敗だらけで落ち込んだ時はこの本を読む。明日から腹に力いれて頑張ろうって思う。調子のいい時もこの本を取り出しては、まだまだ努力が足りないって戒める。「仕事」と書いているけれど、生活という言葉に直してもいい。真剣に、自分の人生と向き合って生きていきたい。現実に流されている自分を見つめなおさなくては……と思わせてくれる貴重な本です。
前作の『白鷹伝』も男たちが熱い! この著者は要マークです。
石岡華織●東京都在住の33歳、書店員。「JR上野駅構内のブックガーデンディラ上野店で働いています。上野駅にお越しの際にはお立ち寄りください」
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大切な思い出との奇蹟の出会い

The End of the World』
那須正幹 ポプラ社 1260円
小6のとき、塾でもらった国語のテキストの問題文の小説を読んでいたら、少し不思議な雰囲気の漂う物語に出会いました。とても魅かれて何度も読み返しましたが、中学校に上がるときに誤って捨ててしまったのか、その後読みたくなって探してもそのテキストは見つかりませんでした。覚えているのは、今はもうあるはずのない町へ行き、小さな頃の自分に会うというストーリーと、『まぼろしの町』というタイトルだけ。インターネットなどでできる限り探しましたが膨大な情報の前にひれ伏すばかり。その物語は私の前から本当にまぼろしのように消えてしまったのです。
高2になったある日、本屋さんに行き、ブラブラと本棚を眺めていたら一冊の本の背表紙に目が止まりました。横文字で『The End of the World』。なんとなく手にとり目次をめくるとそこに『まぼろしの町』という文字が。ドキドキする胸を押さえてページをめくっていくと間違いなく私が探してきた物語がそこにありました。私にとってこの本はこの運命的なエピソードとも合わさって、私の大切な一冊です。また、他の3編も読んだ人の記憶に残る物語です。
かおりん●北海道在住の19歳、学生。「春から大学生です。新しく始めたいことはたくさんあるけど、読書の時間ももっと取りたい!」

あの先生が読んでくれた本

あなたの最も好きな場所』
『福永武彦全集第7巻所収』
福永武彦 新潮社 品切れ
このお話をはじめて知ったのは高校1年生のときだ。けれど自分で読んだわけではない。国語の授業で先生が声に出して読んでくれた。だからつまり、福永武彦の著書を手にしたのではなく教科書にのっていたものだ。
国語のT先生。先生はほんとうに本が大好きな先生で、気に入った本は2冊買うと言っていた。一冊は手にして何度でも読むために。そしてもう一冊は蔵書として保管するために。先生は50代前半くらいで、そんなに背は高くないしずんぐりむっくりで、でも清潔でおじさんなりのお洒落はしていた。ネクタイはしない、柄のシャツにベスト。ボタンはあったりなかったり。薄く茶色の入っためがね。よく響くけど、だみ声。
先生が読み上げる「あなたの最も好きな場所」。タイトルが素敵だ。教科書にのるくらいだからさして長くないお話だったけど、紙面には2段になって書かれていた。タイトルから最後まで途中で止まることなく先生が読んでくれた。先生の朗読は心地よいし面白い。とても役者じみていて、自分でも得意に思っていたのだろうと思う。抑揚があり速度が変わる。太い声で「女」の言葉を読む。とても優しく。「男」が「女」に話しかける。
先生はときどき少しの間を取り私たちを見渡す。「お前たちはどう感じるか考えろ」と訴えている。ただそれだけ。赤ペンも辞書もいらなかった。
私はT先生のこの『あなたの最も好きな場所』の授業でやっと「国語の授業」たるものを理解したような気がする。国語の先生が授業で学生に教えることは何なのかがわかったような気がする。私はそれまで本を読むのが好きだったけれど、先生の『あなたの最も好きな場所』を聞いてから「日本の国語」が好きになった。
T先生の授業、また受けたい。
紫の旗●東京都在住の26歳、会社員。「人生においてもう一度会いたいと思う人が3人いる。特別親しかったとかじゃないのだけれど、何だかとても大好きな人たち」

乙女を悩ませた誤訳

『エラリー・クィーン
Perfect Guide』
飯城勇三/編著
ぶんか社 1365円
「エラリーはあなたのもの、ミス・ポーター」
クイーン君はほがらかにいった。
「ニッキーはあなたのものよ……エラリー」
このラストにショックを受けた女性ファンはどのくらいただろう。まだ10代だった私は『生者と死者と」』(創元推理文庫、現在のタイトルは『靴に棲む老婆』)を読んだあと2日間ため息が止まらなかった。
「小説なんだから」「生身の人間じゃなし……」と、いくら自分に言い聞かせてもため息は止まらない。大好きなエラリーが他の女のものになってしまうなんて……もう二十数年前の話だ。
ところが最近、ぶんか社の『エラリー・クィーン Perfect Guide』を読んで驚いたの何のって、私の読んだ旧作は誤訳であり新訳では、
「エラリーと呼んでください、ミス・ポーター」
クイーン君はほがらかに言った。
「ニッキーと呼んで……エラリー」
となっているというのだ。全然違うやん! 二十数年を経て知った驚愕の真実を前に私はむなしく吠えた。
「あの日の乙女のため息をかえせ〜」
詩子●鹿児島県在住の42歳、地方公務員。「旅先に持ってゆく本を思案中です。1回目・谷川俊太郎○。2回目・島崎藤村×。今度も詩集にするべきか。」
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こにか●東京都在住の26歳、薬剤師。「2匹います。負け犬にはなりません」
投稿者 davinci_blue : 18:16


