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2004年10月06日
畸人研究はいかにして鍛えられたか
『畸人研究』の発端は1986年の横浜国大にさかのぼる。教育学部心理学専攻に奇妙な学生が入学した。その小さい男は、チロリアン帽にセメント袋のような服とおかしい服装をしたり、共通一次試験(当時)を乗り越えてきたはずなのに、現在完了形の「have」を堂々と「持つ!」と訳したり、講義中教授の論説に対していちいち「それは違う」とかつぶやき続けたりと奇行を繰り返した。他の級友が敬遠するなか、奇行はおろか非行少年と幅広く交友する粗暴派の黒崎犀彦と、多動かつ躁状態の今柊二のみがその小男と接触を続けた。その小男、海老名ベテルギウス則雄のキテレツな4年間の行動は、大学卒業後の1993年に『海老名研究とその実際』全16巻にまとめられ、その時点より畸人研究学会が発足した。その研究の勢いのまま、なぜか研究対象の海老名までもが参加し、機関誌『畸人研究』が発行されるようになる。折しも、当時海老名は横浜寿町で福祉の仕事につき、「工事現場で惑星をつくろうとする男」や「将軍カストロ」など素晴らしすぎる畸人の方々と接触、それを『畸人研究』でジャカスカ報告をし始めた。負けてたまるかと黒崎と今は、海老名研究で培ったノウハウをもって探し歩き始め、「木星おやじ」「数列畸人」「エスパータコ焼き」など、めまいがするような畸人に出会えるようになった。常識にとらわれず、自分の主張のままに素直に生きる畸人の姿は、取材しているわれわれに、とてつもない爽快感を与えてくれた。その喜びが『畸人研究』継続の最大の要因だったと思う。また、われわれの感じた爽快感、解放感は、『畸人研究』を通して読者にも届いたようで、現在までに『畸人研究』は別冊も含め合計22冊を刊行できた。最新刊は『別冊畸人研究 北朝鮮の銘峰 金剛山』。さらに、研究の集大成をちくま文庫より『定本畸人研究Z』として刊行できた。
畸人研究は中野「タコシェ」、新宿模索舎、池袋西武「ぽえむぱろうる」、神保町「岩波ブックセンター」「アクセス」などで買えます。
http://www.digipad.com/digi/kijin/

普通の人たちのちょっとおかしな恋愛模様

『どうにかなる日々』 1〜2巻 志村貴子
太田出版 各952円
どこにでもいる普通の人々の恋愛模様を淡々と綴った短編集……と書くと、なんだつまらないと思われる向きもあるかもしれないが、これが滅法面白いのだ。
登場するのは、幽霊と同居しているフリーターの女の子に、生徒に恋をしてしまうホモの高校教師、夢破れて故郷に帰る途中のアイドル歌手とそのマネージャー……と、みんな少しだけ世の中からはみだして都会の片隅でさみしい心を抱えて生きている人たちだ。
けれど、どの話も読み終えた後に心に温かいものが残るのは彼らが不器用ながらも前向きに生きているからだろう。
そうだ、人生には辛いことやままならないことも多いけど、明日はきっとどうにかなるさ、と思わせてくれる、切なさと優しさにあふれた作品である。
くるみ●兵庫県在住の31歳、運送業。「増え続ける本の重みでスライド書棚のスライド部分が動かなくなった。本を減らすか売れと迫る母よ、それができたら苦労しないのです」
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さとぽん●東京在住の34才。「家では猫が本をかじる。やーめーてー」
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色あせない永遠の少女たち

『おちゃめなふたご』シリーズ ブライトン/著
佐伯紀美子/訳 ポプラ社 各630円
18歳。現役“少女”というのにも無理が生じてきたこの頃。乙女道まっしぐらで、
“ときめき”“きらめき”という言葉が大好きな私だが、最近は現実的なことばかり考えてしまい、暗くなる一方。無邪気で純粋だったあの頃の私に戻りたい!!と、本棚を漁ってみた。
幼い頃、本物の“少女”だった私を魅了したのは、海外の児童文学書だった。赤毛のアン、足長おじさん、アルプスの少女ハイジ……。心をとらえて離さなかった名作の数々。純粋さ故、“アンは私”と、読む度に物語の主人公になりきって妄想を繰り広げたのは私だけではないはずだ。そんな数ある児童文学書の中で、今回は『おちゃめなふたご』シリーズを読み返すことにした。
その名の通り、“おちゃめ”な双子、パットとイザベルの学園生活を描いたこのシリーズ。特に大きな事件が起こるわけではないが、英国の女学院、しかも寮生活という設定だけで、私の心はすでに空想世界に飛んでいた。しかもその寮生活のお洒落なこと!! 丘の上の白い石造りの校舎、授業中のいたずらに、中庭でのラクロスの試合、その後に食べる甘いクリームロール。特に私が魅了されたのが、寮での真夜中のパーティ。サーディンにミルクチョコ、ペパーミントクリームにシャンペン……。ご馳走を前にはしゃぐ少女たち。先生に見つからないよう、こっそり行われるパーティは、スリルに満ちていて、ロマンチックで私の乙女心をわしづかみにしたのだった。
そうそう、もう一つ忘れちゃいけないこと。それは田村セツコさんの挿絵である。これがまた乙女チックモード全開のイラストで、どうしてこんなに可愛い絵が描けるの!と叫びたくなるほど。おしゃまな少女たちがポップに描かれていて、より一層、私の妄想をふくらませた。
今読み返してみても、当時のときめきは色あせていなかった。自分が少女らしさを失っていないと知りほっとした。そして、ときめきを甦らせてくれたこの本に感謝した。これからも私は『一生少女主義』。
菅原萌●埼玉県在住の18歳、学生。「文章を読むのも書くのも大好き。好きなことをして謝礼をもらえる、こんなに幸せなことは他にありませんよね」
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やっぱり魁!

『魁!! 男塾』全20巻 宮下あきら 集英社文庫 各600円

『曉!! 男塾』1〜9巻 宮下あきら 集英社ジャンプCデラックス 各530円
中学生のころの友人に、ふすまを開けると階段がある不思議な家に住んでいる子がいた。
その子の家に遊びに行くと、机の上に無造作に、最近ではめっきり見なくなった劇画タッチの本が置かれていて、遊びに行くと必ずと言っていいほど夢中になって読んだ本がある。その本が『魁!!男塾』である。
『ONE PIECE』等が流行っていたころ、私と友人のふたりは時代錯誤の長ラン、その下はさらしだけの高校生?が、ドスやダンビラを振り回し、中国4000年武術と秘術を駆使して、男達が汗と涙と血を流して戦う青春漫画?を読み漁っていた。なぜか作中には民明書房なる架空の出版社が出てきて、怒血暴流などの説明をうやうやしくするのもなぜかしら迫力があった。男を漢と表したり、かなり渋い男塾校歌、自分の名前をやたら叫ぶ校長などもいい味を出している。しかし、この男塾は一度アニメ化されたが、教育上よくないとされすぐに打ち切られた、ある意味伝説の作品である。だけど、そんな賛否両論の漫画だけど、義理を通せば道理が通らない世の中で義理人情の大切さを教えてくれる、私のバイブルである。
松本直樹●和歌山県在住の18歳。高校生。「桐蔭図書専部員一同を代表して、不肖松本は全国紙に載ることができました。だれか気がついてくれるよう期待してます」
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ピーチ姫●東京在住の26歳、塾講師。「毎朝散歩をするようになってから体の調子がよくなりました」
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いつかわかるときがくるはず

『コッコロから』 佐野洋子 講談社文庫 590円
このあいだ、いとこと食事をした。彼女はまだ大学1年生で、東京に出てきたばかりの田舎者だ。高校生のあいだ勉強しかしてこなかった彼女は、親元を離れてちょっと洒落っ気が出てきていた。いくらかアルコールも入ったためか、これまでそんなことを話したこともなかったのに恋愛について勝手にしゃべりだした。どうやら出会ったばかりのサークルの先輩が気になるらしい。
最初は「へぇ」なんて聞いていたが、だんだん不安な気持ちになってきた。一緒に買い物をしたり、学校から部室まで自転車で2人乗りをしたり、なによりとにかくかっこいい、という話まではよかった。しかしその彼には彼女がいるというのだ。
「おい、……ちょっと待て」
妹を守る兄のような気持ちになった僕は必死で、「彼女のいる男にかかわるな」という内容を、言い方を変えて繰り返していた。
そんな彼女に贈ったのが佐野洋子の『コッコロから』だ。手渡すときにも、僕がこれを日本中の女の人全員に読んでもらいたいと思っていることや、もし将来自分に娘ができたら必ずこれを読ませるつもりであるとか、少なくともこれを読んでいる人とでなければ結婚するわけにはいかないとか、エゴイスティックであることを重々承知のうえ、考えていることなどを、熱く!説明してから、渡した。
事実、いとこにはかなりウザがられてしまったけれども、あのコも読めばきっとわかってくれるはずである。
よしろう●東京都在住の21歳。大学生「いとこにフンパツして湯葉を食べさせたのに、ティーンには美味しさがわからないようだった」
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あすなろのように、未来を見つめて

『あすなろ物語』 井上 靖 新潮社 460円
九州・福岡の少年院で17歳から18歳の1年間を過ごした。その頃、数ヵ月に一度、矯正教育の一環としてボランティアのご婦人方を招き、一冊の本を題材に意見や感想を話し合う「読書集会」が開かれていた。その題材になった一冊に『あすなろ物語』があった。
当時10代の私がこの本に受けた感銘は、ちょうど掃除を惰る部屋にひっそりとほこりが積み重なっていくように、年齢を重ねるごとに大切なその部分を何かが覆い隠してしまった。
幾星霜を経て、山陰のある拘置所に繋がれ再び私はこの本を手にした。あすなろの木は「明日は檜になろう」と愚直なまでに願うが、結局は檜にはなれないことから翌檜と名づけられたと言う。
主人公、梶鮎太は独り疎外された者のように、周りの者がそれぞれ檜になる中、ただ漠然と生きている時に、密かに恋心を寄せる佐分利信子に、「貴方は翌檜でさえない」と痛烈な批判を受ける。正に彼女のこの言葉こそ、今の私に向けられた鋭利な刃であった。
たとえ何処にいても、明日に檜を夢見てひたむきに生きていこうと私は心に誓った。
道楽雲介●島根県在住。「『あすなろ物語』。今後再びこの様な秀逸な作品に出会える事を願っています」
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哲学ってナニ?

『〈子ども〉のための哲学』 永井 均 講談社現代新書 735円
中学生の頃、何となく「哲学」というものに興味があった。それは、先人たちが考えた深遠で興味深い価値ある学問で、それを身につけると何か人生にプラスになると思っていたからだ。しかし、書店に並ぶ哲学書の数々は、私の期待に応えてはくれなかった。
数ページ読むことさえ苦痛で、とても面白いと思えない。そんな時に見つけたのが『〈子ども〉のための哲学』。本書との出会いは、もどかしい思いをしていた私にとってまさに渇きを癒す体験だった。読者を強く意識した平易な文章に強い説得力を感じ、驚き、そして感動した。
『〈子ども〉のための哲学』は哲学の入門書だ。しかし、普通の入門書のように西洋哲学史を解説した本ではなく、書かれているのは、著者の二つの哲学と、哲学とは何かという問いに対する考えだけだ。著者の哲学観は、一般的な哲学観を否定するもので、非常に興味深い話だ。著者は言う(引用ではなく意訳)。
「プラトン哲学やカント哲学といった、もうすでに哲学されたものを理解することは哲学ではない、そうではなく素朴な疑問を、自分が本当に納得するまで考えることが哲学だ、そして哲学は本来なんの役にも立たない」
この言葉は、哲学に対する無用な厚化粧を落とし、その下にもっと美しい素顔があることを、私に気づかせてくれた。
私はこれほど哲学することの魅力を、生き生きと語った本をほかに知らない。そしてそれができるのは、著者が本当の意味で哲学者であり、哲学することの楽しさを知っているからだ。
哲学に興味があるけど、専門書は敷居が高くてという人にぜひ読んでほしい。著者の哲学に対する誠実な態度は、読者に強く訴えかけるものがある。
高内寛之●長野県在住の20歳、大学生。「ペーパーナイフを作っていたら指に水ぶくれができてしまいました。イタイ……」
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先輩が教えてくれた健康への道

『食いしんぼの健康ごはん』 大久保恵子/著 文化出版局 1575円
昨年、寿退社をした先輩からプレゼントされたのがこの本。そのとき私を含め4人に本をプレゼントされたのですが、私以外の3人には「お料理1年生」や「お菓子のつくりかた」などのベーシックな料理本。なぜか私だけ、この『食いしんぼの健康ごはん』。たしかにおいしいものが大好きで、毎日食べ歩いている食いしんぼではありましたが……。肉料理が全く載っていない料理本でびっくり。結局何も作らずじまいでした。
しかし、今年になって、病気で入院して仕事を辞めざるを得なくなり、家にいるようになってから改めて読むと、今の自分にぴったりな料理ばかり。さっそく自然食材を買ってきて作り始めました。
いざ作り始めたところ、はまってしまい、とうとうカツオ節を自分で削り始める始末。炊きたての玄米ごはんと味噌汁の地味な食事がしみじみうまい。きっかけを作ってくれた先輩に感謝しています。
苦瓜●千葉県在住の33歳(後厄)、無職。「体を壊して入院療養中です。昭和初期を思わせる相当古い病棟で、エレベーターの扉が手動です。たまに気配を感じるのは気のせいと思いたい……」
投稿者 davinci_orange : 00:00